第12回 男女共同参画学協会連絡会シンポジウム
「女性研究者・技術者を育む土壌~連携・融合による支援を目指して~」

上記のシンポジウムが、2014年10月4日(土)(10:00~18:00)東京大学大学院数理科学研究科楝(東京・駒場)において、主催:男女共同参画学協会連絡会、共催:東京大学、後援:内閣府男女共同参画局・文部科学省・厚生労働省・経済産業省・日本学術会議・科学技術振興機構により開催された。

午前のプログラムは昨年度までに実施された大規模アンケートの結果から問題提起された“女性技術者の働き方―意識・組織・制度―”および“同居支援への支援案の模索”という2つのテーマについて分科会形式で実施された。昼の部では、31の参画団体の活動報告についてポスター発表が行われた。午後の全体会議I では、消費者庁長官(前文部科学審議官)の坂東久美子氏から“女性研究者の・技術者の一層の活躍に向けて”というテーマで特別講演があり、男女共同参画に関する調査結果並びに現在進められている様々な政策が紹介された。全体会議Ⅱでは“男女共同参画学協会連絡会の要望書の具現化に向けて”というテーマで講演とパネルディスカッションが行われ、引き続き各種委員会の報告が実施された。また配布された資料集には日本農芸化学会を含む51の学会の活動報告が掲載されている。昨年度は45学会であったことから、参加学会も増加し、またその活動内容も属性や計年調査だけでなく、女子高校生に対する取り組み、保育支援、キャリアアップのための施策、女性研究者ネットワークの構築実績、女性研究者奨励活動などと多岐にわたっており、参考になる活動が散見された。連絡会には女性のみならず、女性研究者を指導する立場や女性研究者の配偶者である男性教員が1割程度参加しており、異なる側面からの意見も活発に交換された。

その中でも印象的であった全体会議Ⅱのパネルディスカッションについて報告する。パネリストのお一人でもある山梨大学の岡村氏(日本土木学会)より、漫画にもなった“ドボジョ”の活動―特に労働基準法によって禁止されている女性の坑内労働の部分的緩和に対する取り組みと女性土木技術者ネットワークの紹介があった。未だに労働条件に男女差がある職場が存在するというという現実と、1982年から34年間という長い歴史のある女性土木技術者ネットワークの存在に大変驚かされた。また、別のパネリストであるINWES(International Network of Women Engineers and Scientists) Japan代表の菅原氏からは、女性研究者・技術者のグローバルネットワークについての講演があった。菅原氏の講演で、男女共同参画活動はただ単に“男女平等や男女同権”を主張するのではなく、その先にあるメリット―例えば企業であれば優秀な人材の確保や生産性の向上、大学であれば入学希望者の増加、偏差値や大学ランキングへの貢献などといった、組織全員が納得できる目標を達成するための手段として捉えるべきであるという発言に大変感銘を受けた。その後のパネルディスカッションでも、ワークライフバランスやロールモデルの普及といった課題についてフロアを含め積極的な討議がなされ、本シンポジウムが“女性と男性が共に個性と能力を発揮できる環境づくりとネットワークづくり”を実現するために大きな役割を担っていることを実感した。

農芸化学会においては、男女共同参画への取り組みは始まったばかりであり、他の組織に習う点も数多いと思われる。今後は、学会内でも問題を共有・議論し、次世代の女性科学者や技術者の活躍を支援していけるよう組織や取り組みについて整備することが重要だと考える。

芝浦工業大学
越阪部奈緒美