第13回男女共同参画学協会連絡会シンポジウム
「国際的視点から見た男女共同参画の推進」

上記のシンポジウムが、2015年10月17日(土)(10:00~18:00)千葉大学・けやき会館(千葉市)において、主催:男女共同参画学協会連絡会、共催:千葉大学、後援:内閣府男女共同参画局・文部科学省・厚生労働省・経済産業省・日本学術会議・科学技術振興機構により開催された。

午前のプログラムは「仕事と家庭の両立を目指して~私たちの壁であり続ける出産・子育ての乗り越え方を男女で考えよう~」というテーマで、科学技術振興機構の渡辺美代子先生から、現在のように男女共同参画が進んでいなかった時代における出産・子育てにまつわる様々な障壁やその打開法についてご紹介いただいた。その後のパネルディスカッションでは、出産・子育てを支援する現行のJSPS制度(PRD制度・出産子育介護支援制度など)の活用法や今後必要な制度は何かというテーマで様々な意見が交わされた。

ランチタイムには各学協会(46団体)の活動報告があり、農芸化学会も初めて属性調査結果についてポスター発表を行った。他の学会では、属性調査に加え育児支援、女子中高大学生に対する啓蒙活動など積極的な取り組みが紹介されており大変参考になった。

午後のプログラムでは表題にあるように国際的な観点から、Wisczorek氏からドイツの男女共同参画の歴史と現状について、ボルドー大学・小田玲子先生からフランスの複雑な教育環境現在の男女共同参画の取り組みについてお話があった。また我が国の取り組みとして、名古屋大学・佐々木先生から「女性教員の増加により見えてきた効果と課題」という講演があった。名古屋大学・生命理学科は、2007年から実施された「女性研究者モデル事業」、2010年から実施された「女性研究者養成システム改革加速事業」に採択され、現在では女性教員比率が29%にまで上昇した我が国では少ない成功事例であると考えられる。採用については女性限定や分野を問わない採用を実施することにより増員が現実となったという点や、意識を高めるため女性の早期トップリーダー育成プログラムを策定し現役の女子学生に対する啓蒙を進めている点が印象に残った。一方、女性PIが増えるに伴い、子供連れ単身赴任者が約半数までに増加するという問題が生じ、子育て単身赴任教員ネットワークによって相互に助け合う環境を作り上げようとする取り組みが紹介された。しかしながら、研究者カップルの同居問題や女性研究者の研究費獲得など、まだまだ様々な障壁が多いことも問題として提起された。続いて日本学術会議の井野瀬先生からは「科学者コミュニティにおける女性の参画を拡大する方策」について紹介があった。この中では、これまで様々な取り組みが行われてきたにもかかわらず実効のあがらない男女共同参画推進活動の問題点を洗い出したところ、機関における達成度や進捗状況を示す共通のガイドライン・評価基準の策定や、一歩踏み込んだ各機関の取り組みを公表・評価あるいは是正勧告をする専門機関の設置の必要性が提言された。

講演を聞いた率直な感想としては、アベノミクスが推進する女性活用政策に対して、女性はこれ以上頑張れないぐらい大変頑張って応えようとしていると感じた。しかしながら、男女共同参画が文化的に根付くまでにはまだまだ果てしない道のりがあり、それまでに女性たちが疲弊しないでいられるかという点が非常に心配になった。他の学会に比較して農芸化学会においては、女性比率が高く身近な課題であることから、学会として問題を共有・議論するとともに、次世代の女性科学者が少しでも生きやすい環境を目指して、広く社会に発信を続けることが重要であると思われる。


芝浦工業大学
越阪部奈緒美