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5章 物質の代謝

4.光合成
【解説】
 植物は光エネルギーを利用して、無機物(二酸化炭素)から有機物を合成することができます。これを「光独立栄養性」といいます。一方動物は、その栄養源を他者に依存しており、「従属栄養生物」と呼ばれます。ある種の微生物では、化学合成により独立栄養的な生育を示すものもあります。生命の進化を考えるとき、生き物が光合成能力を獲得することにより、そのあとの生物の大爆発が可能になったといえます。特に、初期の光合成で用いられてきた硫化水素のような化合物から、多量に存在する水からの電子の引き抜きによって酸素を発生する酸素発生型光合成を行う藍色細菌(シアノバクテリア)が25〜28億年前に出現し、極めて重要な役割を果たしたと考えられています。
 光合成では、光のエネルギーが必須ですが、その基質となる二酸化炭素、水が不可欠です。当初、水中で発生した光独立栄養細胞にとっての問題は、使える光やCO2が限られていたことです。一方、初期の地球の大気にはオゾンがなく、陸上では、非常に強い紫外線が照射され、植物の陸上への進出を遮っていたものと考えられます。しかし、大気中における酸素の蓄積とともに、オゾン層が形成され、また、陸上への進出において問題となる体内の水分の維持機構(クチクラ層)、水分の輸送系(維管束系、根)が発達してきたこと、さらには、乾燥に耐える種子の形成によって、植物の地上への進出が達成されてきています。
 一般的な植物では、光合成は葉緑体と呼ばれる細胞内の小器官で行われています。この葉緑体のなかでは、光のエネルギーを用いて、二酸化炭素のみならず、無機の窒素や硫黄分子から、アミノ酸が合成されます。炭酸固定系とともに、これらのアミノ酸の生合成は植物に特徴的な代謝系です。

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