2026年度大会実行委員長 谷 史人
2026年度大会実行委員長
谷 史人

日本農芸化学会2026年度大会開催にあたり、一言ご挨拶申し上げます。

今回の2026年度の本大会は、京都での対面開催としては2017年以来9年ぶりですが、創立150年を迎えた由緒ある同志社大学にて開催させていただきます。会期は、3月9日(月)から12日(木)の4日間です。さて、同志社大学での開催は京都において初めてのことですが、同志社大学と農芸化学には深い縁がございます。日本農芸化学会関西支部が設立されたのは昭和9年です。当時、同志社大学総長であられた大工原銀太郎先生を中心とした多くの先人が鈴木梅太郎先生との懇話会を立ち上げられ、この地域における農芸化学研究の牽引と交流基盤の構築にご尽力され、関西支部の創立が実現したという経緯があります。そのときの精神は今日の関西支部、さらには本会全体の学術的活力の根源となっています。関西支部の礎となった同志社大学で開催できることは、長きにわたり本学会の発展と豊かな学術文化の醸成にご尽力いただいてきた諸先生方のご教示とご指導の賜物であり、心より感謝申し上げます。また、皆様方が研究の楽しさや学問の本質を共有しながら、これからの新たな農芸化学を探求していただけることを願っております。

本大会は「生命・食・環境」を軸に据え、授賞式・受賞講演、多彩なシンポジウム、一般講演、展示会、ランチョンセミナー、そして若手研究者(高校生)を育成するジュニア農芸化学会など多彩なプログラム編成となっており、農芸化学の多様性と広がりを象徴しております。

初日の3月9日は、同志社大学室町キャンパスの寒梅館ハーディーホールにおいて授賞式および受賞講演を開催し、その後、ホテルオークラ京都に移動して懇親会を行います。翌10日から12日にかけての3日間は、同志社大学今出川キャンパスにおいて、一般講演(口頭発表)やシンポジウム等を行います。これまでの本学会の伝統を重んじて、一般講演はすべて口頭発表としています。シンポジウムは、会員のみなさまからご提案いただきました35件のテーマを設定させていただきました。一般講演の申込件数にもよりますが、発表者の方々にはシンポジウムに積極的にご参加いただけるように、可能な限り一般講演とシンポジウムが重ならないようにプログラムを編成したいと存じます。充実したご発表と活発なご討論をお願い申し上げます。また、2件の国際シンポジウム(The Korean Society for Microbiologyとの連携シンポジウムと食品科学領域の国際シンポジウム)も企画されています。さらに、産学官の連携強化のための産学官学術交流フォーラムおよびジュニア農芸化学会も例年どおり開催し、お昼時にはランチョンセミナーを開催いたします。企業のみなさまにご協力いただくランチョンセミナーのほか、JABEEランチョンセミナー、BBBランチョンセミナーやDE & I(Diversity, Equity & Inclusion:男女共同参画の推進および外国人留学生や社会的少数者などの多様な構成員が活躍できる環境の整備)ランチョンシンポジウムも企画されており、最先端の情報を収集する場として積極的にご参加ください。

今回、みなさまには短い講演の合間でも展示会場に足を運んでいただけますように、一般講演のメイン会場である今出川キャンパスの良心館の1階フロアーに、機器、試薬や書籍等の展示会を設置しますので、多くの方々にお立ち寄りいただければ幸甚です。また、会場内には休憩所も設けますので、リフレッシュの場として、また、参加者同士が気軽に交流できる場としてご利用ください。

最終日の3月12日の夕方から翌日にかけて、若手研究者や学生諸子を対象とした農芸化学Frontiersシンポジウムを、琵琶湖の湖西にある同志社びわこリトリートセンターにて開催いたします。これからの農芸化学を担っていただける若手の方々の活発な交流の場となることを願っておりますので、奮ってご参加ください。

本大会では、関西支部の発足に縁のある同志社大学で開催することを機に、京都に因んだ二つの企画を予定しております。一つは、農芸化学における重要な科学分野である分析化学において欠かせない質量分析法の最前線を議論するものです。今や、質量分析法は単なる化合物の同定だけではなく、生物体における化合物の可視化にまで応用されています。本企画では、この発展の基礎を築かれた2002年にノーベル化学賞を受賞された田中耕一博士をお迎えし、「マススペクトロメトリー最前線」という特別セッションを予定しています。もう一つは、ジュニア農芸化学会に続いて、「もやしもん」作者の石川雅之氏をお迎えし、「科学とマンガの相性」という特別セッションを予定しており、高校生から大人に至るまで農芸化学や生物学のおもしろさを共有できる機会になればと考えております。是非とも奮ってご参加いただければありがたく存じます。

最後になりましたが、本大会を開催するにあたり、関西支部だけでなくほかの支部の方々にもご支援いただき、総力を挙げて準備にあたっております。また、多くの企業や団体からご寄付、展示、ランチョンセミナーや広告掲載などのご支援を賜りますことに対しまして心から厚く御礼申し上げます。日本農芸化学会は創立から100年を超えて新たな世紀に入りましたが、本大会が、さらに新たな躍進の起点となりますことを祈念し、みなさまのご参加を心よりお待ち申し上げております。