東日本大震災による被災地への理科教育支援を計画・実施するにあたり、報道だけでは知ることのできない教育機関や組織の情報を求めるため、状況把握と今後の支援計画に生かす目的で福島県を訪れた。

概要

日時 2012年6月17日(日) 13:45~18:15
視察先 福島第一原子力発電所より20キロ圏内から県北・県西部付近
案内人 高橋 信幸 氏(福島県立浪江高等学校津島校 理科教諭)
出向者 阪井 康能(被災地支援特別委員会委員長)、東原 和成(同副委員長)、千々松 明子(事務局)

行程

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13時45分福島駅西口集合(地図A)、福島駅より高橋先生の車で飯舘村に向かった。

現在、飯舘村は居住禁止区域に指定されているが、通行および立ち入りは許可されている。飯舘村内にある相馬農業高校飯舘校(地図B)を視察。校内に設置されている線量計は、現在約4.4 μSv/hを計測している(写真1)。

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写真1.相馬農業高等学校飯舘校内に設置された放射線量測定器(写真の数値は4.381μSv/h)

今回の被災地支援で浪江高校津島校が購入した線量計Mr. Gammaを携行したが、車内では1-2μSv/h であるのでかなり遮蔽されている(写真2)。線量計Mr. Gammaはかなり精度が高い。

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写真2.窓を開け線量計をかざして撮影(写真の数値は2.500μSv/h)

飯舘村役場には警察車両などが駐車されており、村内も犯罪防止のためのパトロールがおこなわれている。

その後、南相馬市(地図C)に向かい、仮設校舎が設置されている原ノ町の原町高校(地図D)を視察(写真3)。

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写真3.原町高校のグランドに建設中の仮設校舎

仮設校舎の敷地内は、線量度がとても低い(0.1μSv/h以下)。土壌の入れ替えがとても有効であることを示している(写真4,5)。

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写真4.5.仮設校舎の土壌(右の写真の数値は0.095μSv/h)

その後、小高区へ向かう。小高区は原発20キロ圏内に入っているところで今でも居住禁止区域に指定されている。線量は3μSv/h程度で飯舘村よりは低い。津波の被害を視察する(写真6)。

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写真6.南相馬から小高地区に向かう県道から海岸方向を撮影

小高工業高校(地図E)を視察(写真7)。
小高区地域の建物倒壊状況はかなりひどい。場所によって揺れ方に差があったことを感じさせる。

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写真7.小高工業高校のグランド

その後、浪江高校津島校の仮設校舎が設置されている二本松市の安達高校(地図F)を視察(写真8)。

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写真8.安達高校正門

線量計は0.5μSv/hを示しているが(写真9)、測定器のところが一番高いそうなので平均的には0.1-0.2μSv/hくらい。

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写真9.安達高校内に設置された放射線量測定器(写真の数値は0.481μSv/h)

高橋先生は、仮設校舎をとても誇りにしている(写真10,11)。

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写真10.11.安達高校内の浪江高校津島校(左:手作りの表札、右:校舎全体)

仮設校舎でがんばっている生徒達の顔が目に浮かぶ。二本松駅(地図G)に18時15分到着して視察終了。

視察の感想

  • 現時点での支援だけでなく、仮設校舎から地元に戻るときにも支援が必要であることを認識した。そういう意味では、支援も長い時間スケールで考える必要がある。
  • 地区によって被災状況やその程度(地震、津波、放射線)が全く異なり、これは学校によっても全く異なるであろうことが容易に想像できた。従って、支援方法(出前授業実験or 物品or 両方)、時期、については、個々に応じて対応する必要がある。
  • 立ち入り制限されている原発20キロ圏内でも、放射線量が低めの地域もあり、現地の状況把握は非常に重要であることを認識した。