概要

学校名 沖縄工業高等専門学校
日時 2011年10月28日(金)14時50分~17時
場所 沖縄工業高等専門学校 視聴覚ホール
授業の名称 食品を科学的に研究すること
講師 清水 誠
東京大学大学院農学生命科学研究科教授
担当教員 田中 博 (生物資源工学科)
聴講者 172名(本科3年生:43名、本科4年生:36名+34名、本科5年生:36名、教員その他:23名)
目的 沖縄工業高等専門学校の生物資源工学科に在籍する1~3年次(高校相当)を含む学生(生徒)に対し、農芸化学、特に食品を科学的に研究することの「面白さ」を発信することで、沖縄の天然食資源の活用を推進することに興味をもつ技術者・研究者の芽を、さらに育成する。
特色 豊富な経験と見識を備え、現在、研究現場または開発現場に深く携わる講師に、様々な研究開発の過程で考えたこと、感じたこと、悩んだこと、成功したこと、失敗したこと、興奮したこと等を、実例を挙げてやさしく解説していただく。この具体的で現場感覚に富む情報発信により、学生(生徒)に「疑似体験」を促し、食品を科学的に研究することの楽しさ、面白さ、奥深さに自分自身で気づくように仕向けることを特色とする。

農芸化学という学問分野への興味

沖縄高専グラフ1

  • 参加者の87%が「とても興味がわいた・興味がわいた」と回答
  • 参加者の3人に1名が「とても興味がわいた」と回答

【主な理由】

  • 研究者として研究を進めてゆく上で、日常生活の中に潜むサイエンスの種を見出してゆき、新しき製品、付加価値を創造してゆくことに情熱をかける学問分野なのではないかというイメージを、清水先生のお話を聞いてもつことができた(生物5年)
  • 1つの研究からどんな方向に話が転がってゆくかがわからない楽しさがあるので、自分もそんな経験をしてみたい(生物5年)
  • 農芸化学は、生物にとって基本的な部分と現代の先端技術を組み合わせたような、とてもおもしろい分野だった(生物4年)
  • 私たちの生活とつながっていることが分かったから(生物4年)
  • 農芸化学という分野が、こんなにも深く他の分野の研究に関わっているとは思っていなかった。一番身近にあるものだから、研究もすごくやりがいがありそうだと感じた(生物4年)
  • 将来、食品を研究し、開発する仕事に携わりたいと思っていたので今日の講義を聞いて色々と勉強になった。自分も研究していきたいと思う分野でした(生物3年)
  • 農芸化学にも興味がわいたが、主に研究するということに興味がわきました。1つの研究から世界中の教授の目にとまったり、友達になったり、何かしら世の中の役に立ったりと、楽しそうだと思った(機械4年)

出前授業沖縄高専グラフ2

  • 「とても興味がわいた」の比率は、生物5年が最も高かった
  • その理由として、5年生は、他学年に比べて専門科目の履修量が多いため、講義内容を、より”身近”に感じることができたことが挙げられる
  • 機械システムの学生の多くが農芸化学に興味をもったと回答していることから、研究分野は異なっても、考え方・姿勢・意識・環境等は共通である(共感できる)ことが示された

【生物5年生が獲得した考え方・姿勢・意識・環境】

  • 科学への意識・姿勢について
    ・ 日頃から考えることを意識してみようと思いました
    ・ 日常においても科学の目を持ちたいと思った
    ・ 自分も真似して観察してみようと思った
    ・ 身の回りにはサイエンスの視点で見ることができる現象が数多くある
    ・ 日頃の生活でも、何か気になったこと、疑問に思ったことについて、科学的に考えてみれば、違う視野から物事を考えられるだろうと思った
    ・ 生きてゆく上で、考え、迷うことは、その後の自分を作ることだと感じた
    ・ 「似ていること」ではなく「違い」を示し、「違い」に意味を与えることがサイエンスであることを学んだ
    ・ 新しい発見を見逃さない視力、発見したものを発展させる努力が必要という言葉が心に残りました
  • 研究に対する意識・姿勢について
    ・ 知らなかったことがわかってゆくから研究は楽しい
    ・ 研究対象をつまらないと思う時は、その研究対象に対する知識が足りないかもしれない
    ・ 研究について、楽しそうに話しているのが印象的だった
    ・ 1つの研究から、どんな方向に転がってゆくかわからない楽しさがあるので、自分もそんな経験をしてみたい
    ・ 研究は人生を豊かにする、本当にそうだと感じ、素敵な言葉だと思いました
    ・ 本気でやることが大切だと思いました
    ・ 何事も、行き詰まったら初心に帰って見直したら解決できる
    ・ とことん調べて、その研究の全体像、意義を見出してゆくとモチベーションは上がってくる
    ・ 挫折してもへこたれることなく、一念発起してまた立ち上がることで新たな道が開け、成功への道を歩めることができるのだということを学んだ
    ・ 将来に対しての不安に関して、やたらと深刻に考えるのはやめようと思えました。
  • 研究環境について
    ・ 学問を通じての様々な人との出会い、視野の広がりは、とても魅力的でした。
    ・ どこで、どうゆうつながりになるか分からないので、自分の研究も手を抜かないように追及してゆきたいと思った。
    ・ 仕事を通して人とのつながりが増えてゆくということは、常に仕事に対して真剣に取り組んでいる人についてくるということがわかった。
  • その他
    ・ 日本の農芸化学に貢献したい。
    ・ わかりやすく、正しい言葉を使おうと思いました。

【機械システム工学科学生からのフィードバック】

  • 自分の研究を楽しそうに話していたので、うらやましいなと思った。
  • 非常に新鮮な話が聞けたので、さらにいろいろな話を聞いてみたいと思いました。
  • 普段触れないような内容だったので聞いていて面白かった。勉強してみたいと思った。
  • 授業では「そうゆう定理なんだ!」、「そうなるもの」と割り切って理解しているが、研究とは、当たり前のようなことでも「なぜ?」と思うことが大切だと感じた。
  • 今回の講義は「食品を科学的に」というテーマであった。自らの専門分野にも他分野の「考え方」を取り入れて広視野でかんがえたい。
  • 分野が違いすぎて、興味がわく以前に講義の内容がピンとこなかった。
  • やっぱり機械の話の方が楽しいと感じてしまいました、すみません。

効果

(食品を)科学的に研究することの楽しさ、面白さ、奥深さに自分自身で気づくように仕向ける」という目的については、聴講者からのフィードバック(前述)から、高い程度で達成できたと考えています。清水先生には本講義の目的を理解いただいた上で講義内容を準備していただき、かつ、カジュアルでインタラクティブな講義を行っていただいたことで本効果が達成されたと考えています。
 「気づき」の次のステップは「実践」です。学生諸君が獲得した「考え方・姿勢・意識・環境」などを繰り返し示すことで、学生が自ら行動を起こすことができるための支援(教育活動)を行います。同時に、沖縄の天然食資源の活用を推進することに興味をもつ技術者・研究者の芽を、さらに育成し、農芸化学の研究分野の発展に貢献したいと考えています。 (沖縄工業高等専門学校 生物資源工学科 田中 博)

授業風景

出前授業風景1

出前授業風景2