日本農芸化学会2008年度大会が、本年3月26日(水)から29日(土)までの4日間、名城大学天白キャンパスにおいて開催された。名古屋での開催は10年ぶりとなる。名古屋駅周辺は再開発により大きく変貌を遂げ、会場となった名城大学も10年前とはすっかり様変わりした。大学のシンボルとも言えるタワー75や大人数を収容できる講義棟2棟が建設され、全ての講義室に高機能のAV機器が配備されていた。美観、利便性いずれについても申し分のない会場で、大会実行委員会として名城大学に感謝したい。大会は例年通り盛況で、参加者総数5,267名(東京で開催された2007年度大会は5,183名)、一般講演数2,434件(前回2,323件)であった。

大会初日3月26日(水)の午前中は名城大学名城ホールにおいて総会が開催され、引き続いて2008年度の学会賞(2件)、功績賞(2件)、技術賞(2件)、奨励賞(10件)の授賞式、B.B.B.論文賞(10件)とMost-Cited Paper Award(1件)の表彰式、第5回農芸化学研究企画賞(2件)の授賞式が行なわれた。また、本会推薦の工藤俊章氏(長崎大学水産学部)が日本農学賞を受賞したことが報告された。

名古屋城

午後には、日本農芸化学会賞受賞者の浅野泰久氏(富山県立大学工学部生物工学科)による「新しい酵素機能の開拓と産業利用に関する研究」と田之倉優氏(東京大学大学院農学生命科学研究科)による「産業利用を目指したタンパク質構造解析」、日本農芸化学会功績賞受賞者の河合富佐子氏(岡山大学資源生物科学研究所)による「微生物による合成高分子の分解・代謝に関する生化学的・分子生物学的研究」および清水誠氏(東京大学大学院農学生命科学研究科)による「食品機能分子と腸管系の相互作用の解析」の講演が行われた。

続いて、農芸化学技術賞受賞者の秋元健吾氏ほか3氏(サントリー(株))による「胡麻に含まれるセサミンの機能解明と健康食品の開発」および采女英樹氏ほか3氏(住友化学(株))による「新規ネオニコチノイド系殺虫剤クロチアニジンの開発」の講演が行なわれ、その後、農芸化学奨励賞を受賞した若手研究者10名による講演が行なわれた。

夕刻には、会場をウェスティンナゴヤキャッスルに移して懇親会が開催された。懇親会参加登録者は506名で、当日参加者を含めると全参加者は691名に達した。

授賞式

大会の講演はすべて名城大学天白キャンパスで行われた。今大会の一般講演(2434題、発表9分、質疑3分)は書画カメラ(OHC)を使用することとなった。初めての試みであったが、AV機器の専門家に常駐してもらうなど名城大学のご配慮もあり、大過なく終えることができた。時代の流れでOHCを使用する機会は多くなると思われるので、今大会は良い参考となるのではないだろうか。多くの会場が盛況であったが、講義室の収容人数が大きいため、一部の極めて人気の高い会場を除いて入場できないようなことはなかった。前大会に引き続き、各会場の収容人員に対する混雑度を集計したので、次回以降の大会実行委員会の役に立てば幸いである。

一般講演会場風景

27日の夕刻には学内のレストラン「名城食堂」で若手研究者のためのミキサーが開催された。今大会ではこのミキサーに力を入れたが、当初の予想をはるかに超えて300人ほどの収容定員がすぐに満員になった。もし飲物、食物が十分でなかったらこの場でお詫びしたい。

シンポジウム会場風景

シンポジウムは大きな講義室が数多く確保できたため28テーマの開催となった。そのうち、社会性の高い科研費、JABEE、生物遺伝資源に関する3テーマは一般講演と並行して3月27、28日(木、金)に行った。大会初めての試みとしてランチョンシンポジウムとして行なったが、チケットが早々になくなるなど非常に盛況であった。学術的なもの25テーマは最終日の3月29日午前中に一括して行った。農芸化学らしく多分野に渡るテーマで開催されたため、最終日に会場を訪れた人数もかなり多かったのではないかと思っている。どの会場も盛況であったが、中でも、バイオマス関連のシンポジウムは入りきれないほどの人気であった。

ジュニア農芸化学会会場風景

一昨年に初めて開催され東京大会に引き継がれた高校生による研究発表会「ジュニア農芸化学会」は27日に開催された。展示会場の一角でのポスター発表であり、多くの学会参加者にご覧頂けたと思う。今回は、愛知からの10校19演題に加えて東京から沖縄まで総数20校34演題と、予想を超えた参加で大盛会であった。終了後は眺望の良いタワー75最上階のレセプションホールに場所を移し、表彰式と懇親会を行なった。今大会では最優秀賞1件、優秀賞3件、アイデア賞5件を選考し、また、すべての発表に対し参加賞を授与した。また、中部支部維持会員企業のご協力を頂いて、景品も授与した。

名城大学タワー75

展示会出展数は121社(団体)(内「バイオビジネスアピールエリア」5団体)であった。会場の一角で名城大グッズや名大グッズが当たる抽選会を行なった。また、ランチョンセミナーの参加企業は11社であった。

大会実行委員長

今大会では大会始めての試みとして就職懇談会を開催した。参加企業各社にはそれぞれ小会議室を準備し、内容については自由に企画して頂いた。会社説明、質疑応答、面談などが主であった。開催時期の点で多少気がかりであったが、10社にご参加頂き、参加企業の皆様には概ねご好評を頂いた。次年度以降の開催を望む声も多く聞かれた。

懇親会鏡割

今回の大会は会期を通して好天に恵まれ、花冷えの日もあったものの、桜もちょうど見ごろを迎えるなど実行委員会側としても恵まれた大会であった。最後にご支援・ご協力を賜わりました名城大学の皆様、維持会員企業各社、ならびに参加者の皆様に感謝いたします。

2008年度大会総務
小林哲夫、田村廣人、船隈透、加藤雅士、近藤竜彦、金丸京子