2011年3月25日(金)~28日(月)まで、京都女子大学において開催される予定であった日本農芸化学会2011年度大会(実行委員長:植田和光 京都大学農学研究科教授)は、口頭発表とそれに対する質疑応答を取りやめることとなった。

大会の開催を2週間後に控え、実行委員一同が最後の確認を行っていた3月11日14時46分に、東日本は大きな災禍に見舞われた。三陸沖を震源として発生した東日本大震災である。この震災により、死者 15,310人、行方不明者 8,404人におよぶ未曾有の被害(2011年6月1日現在、警察庁発表)がもたらされた。日々明らかにされる地震・津波による被害や福島第一原子力発電所の事故の状況を受け、理事会と大会実行委員の主だったメンバーは関係各位との協議の結果、3月15日に大会の中止を決定した。

具体的には、一般講演(2,515件)・シンポジウム(26件)・展示会(118件)・ランチョンセミナー(16件)・ランチョンシンポジウム(2件)・高校生プログラム(高大連携シンポジウム・ジュニア農芸化学(57件))・拡大サイエンスカフェ・第19回農芸化学Frontiersシンポジウム等の口頭発表は中止し、総会、授賞式および受賞者講演は5月6日に延期した。

2011年4月4日付けの発表で詳しい経過をご報告させていただいたとおり、要旨集は3月5日付で発行しており、3月10日には発送手続きも終了していた。このような事情等を鑑み、2011年度大会は成立したものと位置付けた(3月16日)。これに伴い、「大会参加費」は返却しないことする一方、「懇親会参加費」は3つの方法(①東日本大震災の義援金への転用、②年会費への転用、③振込みによる返金)で対応させていただくこととした(6月30日〆切後の対応分類:① 286件[2,780,000円]、② 107件[1,015,000円]、③ 149件[1,395,000円])。これらの事情に加え、トピックス賞授賞候補演題は大会開催以前に決定していたので、候補演題29件すべてを有効として、対象者に郵送にて賞状をお送りし、栄誉を称えた。

一方、大会関連事業である第37回化学と生物シンポジウムは、3月24日に京都大学百周年時計台記念ホールで開催され、「美味しく健康に生きるヒント」と題して7件の発表が行われ、一般市民を含む多くの聴衆に参加していただき、盛況であった。また、ジュニア農芸化学会(PDFプログラム)に参加を予定していた高校3年生にとっては、研究発表の場を失ったという事情や、今回の高校生プログラム運営にあたり、積極的に外部資金を調達した経緯も考慮し、その資金で参加証明書と農芸化学会のロゴ入りの記念品を作成し各高校の口頭発表予定者に郵送した。

以上、口頭発表が中止となった2011年度大会を顧みた。学会開催の直前の大災禍であったため、多くの対応が大変難しいものになった。植田実行委員長のもと、実行委員全員が迅速に全力で問題解決に当たったが、短時間に多くの事柄に対応する必要があったため、結果的には学会員の皆様方には大変なご迷惑をおかけしたことも多々あったと懸念する。この場を借りて、お詫びを申し上げたい。また、東北地方が被った大きな被害のため、当初仙台で開催される予定であった2012年度大会を再び京都(会期:2012年3月22日(木)~25日(日); 実行委員長:加納健司 京都大学農学研究科教授)で開催することとなった。実行委員一同、2011年度大会の経験を生かし、素晴らしい大会にしたいと考えている。

最後になるが、改めて東日本大震災で被災された方々にお見舞いを申し上げ、 亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された地域の一日も早い復興を心よりお祈りする次第である。

2011年度大会総務
加納健司、成田宏史、河田照雄、森直樹、桂博美