日本農芸化学会2016年度大会(実行委員長 川端 潤 北海道大学大学院農学研究院 教授)は,2016年3月27日(日)から30日(水)までの4日間,札幌市教育文化会館,ロイトン札幌,札幌コンベンションセンターおよび札幌市産業振興センターを会場として開催された。札幌での日本農芸化学会の開催は2005年以来11年ぶりのことで,3月末の開催は2005年大会に続いて2度目である。2005年大会では期間中に大雪に見舞われたため,天候の悪化による混乱を常に懸念する大会運営になったが,最終日に多少の雨が降ったものの,この時期としては大会期間を通して暖かく穏やかな好天に恵まれた。授賞式,受賞講演および農芸化学「化学と生物」シンポジウムは札幌の大通公園に近い札幌市教育文化会館で,ポスター形式となった一般講演および各種シンポジウムは東札幌の札幌コンベンションセンターで開催された。
本大会では,WEB受付を主たる申込み方法とするとともに,当日参加の方の参加費払い込みもクレジットカード決済へ可能な限り誘導した。参加者数4323名のうち事前登録参加者は3222名であったのに対し,事前登録締切後の参加登録者が700名を超える大会となった。また,懇親会参加者656名のうち,事前登録者は479名で,100名程度の当日参加申込みがあった。
大会初日は,9時30分より札幌市教育文化会館大ホールにて2016年度学会賞等授賞式,農芸化学研究企画賞表彰式(3件),ならびに第1回特別賞の表彰が行われた。特別表彰は,2015年Inhoffen Medalを受賞された長田裕之先生に対して行われたものである。これに引き続いて,学会賞(2件),功績賞(2件),技術賞(4件),奨励賞(10件)の各受賞者による講演が行われた。2階席を含めて収容人員1100名とかなりゆとりのある講演会場では,600名ほどの参加者が熱心に聴講していた。

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             授賞式の様子                                                    長田氏への第1回特別賞表彰

受賞講演終了後,昨年度の岡山大会と同様に,16時30分から同じ会場で農芸化学「化学と生物」シンポジウムを『壁を越える化学と生物』という総合タイトルで開催した。今回のシンポジウムは世界的な賞を受賞された2名の先生にお話しをいただき,高校生・一般の方々に農芸化学関連研究の面白さを広く理解してもらうことを主たる目的とした。会場であるホールの中心部の座席を高校生優先席として,ジュニア農芸化学会参加者や地元の高校生に本シンポジウムへの参加を呼びかけたところ,高校生優先席はほぼ満席となり,聴講者も700名を数えた。講演には,特別賞を受けられた長田裕之先生と2010年ノーベル化学賞を受賞された鈴木 章北大名誉教授を受賞講演と特別講演にお招きした。一般・高校生と学会員が共に夢と興味をもてる内容で,それぞれご自身の研究を紹介していただいた。また,昨年度のジュニア農芸化学会で最優秀賞を獲得した宮崎大宮高校と札幌から最初に参加申込みがあった札幌日本大学高校の生徒それぞれ数名が,鈴木先生との対話を通して研究の面白さ,楽しさを学んだ。高校生には何事にも代えがたい経験になったであろう。

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 農芸化学「化学と生物」シンポジウム来場者                                鈴木先生と高校生との対話          

その後18時30分より,会場を徒歩5分のロイトン札幌に移し,懇親会が開催された。開会にあたり,恒例の鏡開きが行われた。650名を超える参加者による交流がなされ,北海道の醸造元11蔵全ての日本酒を参加者に味わってもらえるコーナーや,北海道を代表する料理としてサフォークのローストや道産子持ちシシャモ,本場の味噌ラーメン,北海道の鮮魚を使った生寿司などを特別に用意したが,大変好評であった。

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懇親会恒例の鏡開き                                                      懇親会の様子

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北海道の地酒コーナー                                                  サフォークのロースト

大会2日目からは,札幌コンベンションセンターをメイン会場に,一般講演としてのポスター発表(2130題),シンポジウム(25課題,139題),ランチョンセミナー(15題),ならびにJABEEランチョンシンポジウムと男女共同参画ランチョンシンポジウムが行われた。会場内には,2015年ノーベル生理学・医学賞を受賞された大村 智先生関連のパネル展示コーナーを設置した。ポスター発表からは,事前審査および大会主宰者によるポスター貼付の確認を経て,今大会より学会長名で28題にトピックス賞が授与された。ポスター会場ではコアタイムに極めて活発な説明と討論が行われた。特に大会2日目は,食品分野と微生物分野のポスター前で参加者が移動できないほど混雑したため,大会2日目終了後,混雑緩和の策としてこれらの分野のポスターパネルの間隔を50 cmずつ拡げる処置を急遽とることにしたほどであった。
シンポジウムはテーマを広く募集し,応募されたものを全て採択した。200席以上の会場を最大限確保したが,特に大会2日目は会場に聴講希望者が入りきれず,参加者には多大な迷惑をおかけした。机を取り払ったシアター方式にするなど,事前に座席数を増やす工夫をすべきであったと反省している。ランチョンセミナーは,大会期間を通して入場券配布開始30分でほぼ全てのセミナーが配布を終えるほどの人気であった。配布された弁当は札幌駅に駅弁を卸している製造元から調達し,概ね好評であった。

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札幌コンベンションセンター                                           ポスター会場(コアタイム)

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     シンポジウム会場                                              産学官学術交流フォーラム

大会3日目には産学官学術交流フォーラムとミキサーが開催された。フォーラムでは第11回,第12回,第13回農芸化学研究企画賞受賞者の最終報告,中間報告,企画発表に引き続き,「地方創生!! 表示制度を活かせるか?産学官連携で探る地域食品の未来」をテーマに,北海道地域食品研究の最前線について熱い討論がなされた。夕刻の合同ミキサーには,多くの参加者が世代を超えて集まり,会場の料理が小一時間で無くなるほどの賑わいになった。ビール・ワイン等を提供いただいた各社に感謝申し上げる。

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ランチョンシンポジウム会場入口                                               ミキサーでの交流            

大会2日目から4日目の会期中,展示会が札幌市産業振興センターと札幌コンベンションセンターを会場に開催され,出展企業(産振74社,SCC 書籍7社),バイオビジネスアピールエリア(9社)の展示が行われた。展示会場がメイン会場から離れていたために,参加者が展示会場に足を運ぶかが懸念されたが,抽選会や休憩室の設置,PC電源の提供などにより,展示会場を訪れる人が多く,出展企業からは「思ったよりもブース訪問者が多くあり,良かった」との評価も多く得ることができた。展示会場における抽選会には参加証による認証を行い,参加者の展示会場への誘導効果に加え,参加者の多くが展示会場に足を運んでいる実態を把握することができた。抽選景品については,北海道大学生協のプレミアム製品等を用意したが,要冷蔵品は避けるべきであったと反省している。また,岡山大会を踏襲し,今回も完全無料託児を実施したが,多くの会員に好評であった。
今大会においても,大会期間中の飲料は農芸化学会関係の諸企業にご寄附いただいた。今回も大会実行委員会からの依頼に加えて,学会長(本部)から飲料関係メーカー(賛助会員)への直接依頼支援もあって,10社から9500本を超える飲料の提供をいただいた。飲料は,主要な展示会場とした札幌市産業振興センターに設けた休憩室3室で無料配布し,大会期間中に全てが消費されるほど好評であった。メイン会場と各休憩室には社名一覧を掲示させていただいたが,飲料提供メーカー各社にはこの場を借りて御礼を申し上げる。

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             ご寄付いただいた休憩所の飲料                                                   展示会会場                      

大会2日目に,高校生の研究発表会「ジュニア農芸化学会2016」が開催された。全国から39の高校が参加し,生徒107名,教員47名の発表者および引率者を迎えて39題のポスターが展示された。会場とした400名収容可能な国際会議場に立錐の余地もないほどの参加者が集まり,高校生の熱心な発表に耳を傾け,活発な質疑応答が行われていた。複数名の審査員による採点の結果,金賞1件,銀賞1件,銅賞2件が選ばれた。今回の大会においても,本学会の被災地理科教育支援事業の支援により,宮城,福島の被災2県から3校(生徒8名,引率教員4名)をジュニア農芸化学会に招待した。表彰式は13時頃から行われ,記念品の贈呈式も行われた。その後,昼食を兼ねた交流会が開催されたが,ほぼ全ての高校生が参加し,高校生相互間および高校生と農芸化学会会員との交流を大いに深めることができた。

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ジュニア農芸化学会参加者集合写真                                                     表彰式                    

大会最終日である30日の夕方からは,札幌市定山渓の定山渓ビューホテルにて第23回農芸化学Frontiersシンポジウムが開催された。今回は,農芸化学会員の学生および若手教員ら約100名の参加があった。シンポジウムでは6名の講師による講演があり,最先端の研究の紹介とそれに対する活発な討論が行われた。また,交流会も夜遅くまで行われ,大盛況であった。翌日31日には,エクスカーションとして産業技術総合研究所北海道センターの遺伝子組換え植物工場などを見学した。お忙しい中,研究施設を案内してくださった同研究所の方々にこの場を借りて御礼を申し上げる。

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Frontiersシンポジウム参加者集合写真                                           交流会の様子               

日本農芸化学会大会は5000人規模の参加者数を誇る大会であるが,大会実行委員会・学会本部・委託業者の三者が情報を共有し,はっきりとした役割分担を行えば,北海道支部のような小規模な支部でも良好な運営が可能と思われる。実際,比較的少人数規模の大会実行委員会ではあったが,各自が知恵を出し合い,全業務を滞りなく遂行できたことを誇りとしたい。また今回の大会は,コンベンション運営委託業者への運営管理作業の委託を根付かせる大会との位置づけであったが,トラブルもほとんどなく,実行委員会の負担は確実に軽減できていたと思われる。この時期の札幌での大会開催にあたり,大会参加予定者の皆様方からは気象に関する幾ばくかの不安を聞かされてはいたが,幸運にも穏やかな好天に恵まれ,路肩や山肌にまだ残雪のある早春の札幌での大会に満足していただけたのではないかと,大会実行委員一同,心から安堵している。
最後に,本大会の開催にあたり,集約型の狭い会場内で多くのイベントにご協力をいただいた参加者の皆様方,ご支援をいただいた多くの協賛企業と学会事務局の方々,また,大会運営をスムーズにフォローアップしていただいた近畿日本ツーリスト社およびエー・イー企画社の担当の方々に厚く御礼申し上げる。

2016年度大会実行委員会総務
橋床泰之