日本農芸化学会2024年度大会(実行委員長 東原和成 東京大学大学院農学生命科学研究科教授)は、学会創立100周年の記念大会として、2024年3月24日(日)から27日(水)までの4日間、東京農業大学世田谷キャンパスを会場として開催された。なお、大会前日の3月23日(土)には、東京大学駒場キャンパスおよび京王プラザホテルにて本学会の創立100周年記念式典·祝賀会が開催された。

東京での大会開催は、2019年に同じく東京農業大学で実施して以来5年ぶりである。2020年の福岡大会がコロナウイルス感染症の影響で中止になった後、仙台、京都、広島とオンライン開催が3大会続いたが、通常の対面型大会としても5年ぶりの開催ができたことが何より喜ばしいことであった。一般講演数は1,493件であり、昨年度(1,194件)より約300件の増加となったが、コロナ禍前の2019年(1,676件)に比べると183件減少している。なお、シンポジウム講演数は特別企画を含めると2019年(167件)とほぼ同じ168件であった。参加者については、総参加者数4,183名でありオンライン開催時(昨年度は3,168名)より大幅に増えたが、2019年(4,606名)に比べると、残念ながら減少している。

今大会は対面復活となったが、コロナ禍での準備であったこともあり、懇親会は従来のホテルでの開催に戻すことなく、100周年大会の特別企画としてSocial Gatheringを大会初日と2日目(24、25日)の夕刻に現地東京農業大学キャンパス内(百周年記念講堂前広場、大学生協カフェテリアグリーンとレストランすずしろ)で開催した。従来のミキサーを拡張・格上げした、無料で自由な出入りが可能な、学生を含めた参加者全体を巻き込む交流の場を提供でき、2日間で1,275名のみなさまに日本ワイン・日本酒とともにマリアージュした料理を堪能いただけた。Social Gatheringのほか、もう一つの特別企画だった「農芸化学を体感する(26日)」企画にビール、ワイン、日本酒を提供していただいた関係者に感謝申しあげる。
2019年度と同様に、大会期間中のほとんどのイベントを東京農業大学世田谷キャンパス内で開催し、特に一般講演とシンポジウムが一つの建物内(1号館)で開催できたため、参加者にとって利便性が高かった。そのほか、同キャンパスに竣工されたばかりの国際センターでの企画も開催された。会場を提供いただいた東京農業大学と関係者のみなさまに厚くお礼を申しあげる。

大会初日(24日)は東京農業大学世田谷キャンパス百周年記念講堂にて、学会賞等、農芸化学女性研究者賞等、農芸化学研究企画賞ならびにBBB論文賞の授賞式および表彰が行われた。授賞式のあとには、日本農芸化学会賞(2件)、功績賞(2件)、技術賞(2件)、奨励賞(10件)の受賞講演が行われた。また、特別企画のシンポジウム「これまでの農芸化学研究の100年を振り返って」に加え、別府輝彦先生追悼講演も開催された。女性研究者賞(2件)、若手女性研究者賞(2件)、女性企業研究者賞(1件)の受賞講演は大会3日目(26日)のD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)シンポジウム内で行われた。
大会2日目(25日)は、一般講演ならびに大会シンポジウム、ランチョンセミナーに加えて、教育講演、分野融合連携シンポジウム、産学官学術フォーラムが開催された。大会3日目(26日)は、これらのほかに、JABEEランチョンシンポジウム、男女共同参画ランチョンシンポジウム、BBBランチョンセミナー、農芸化学のD&Iシンポジウム、ジュニア農芸化学会、そして、特別企画「農芸化学を体感する」が開催された。最終日(27日)は、午前中の教育講演、一般講演と大会シンポジウムの後、特別企画「これから100年の農芸化学研究を展望する」からの連続したプログラムとして、クロス・ウェーブ府中(東京都府中市)で農芸化学Frontiersシンポジウムが開催された。講師6名に加えて94名の参加があり、講演会、交流会(懇親会)を通して、さまざまな分野間で交流を深めていただいた。

高校生による研究発表会「ジュニア農芸化学会」では全国から78校(345名)の参加があり、大規模に開催された。4年ぶりの対面での開催にも関わらず、ポスター会場は参加者で一杯となり、高校生の熱心な発表と活発な質疑が行われた。審査委員による厳正なる審査の結果、 金賞1件、銀賞4件が選ばれ、表彰式を行った。また本大会の東原委員長から学長賞も授与され、生徒たちにとっても記念となる催しとなった。

これまでの大会でなかった特別企画として、Social Gatheringのほか、農芸化学の科学・技術の粋を極めた成果物を生産・販売する企業のみなさまのご協力を得て「農芸化学を体感する(26日)」を国際センターで開催した。メルシャン エグゼクティブ・ワインメーカーの安蔵光弘氏のトークイベントも開催するなど、ジュニア農芸化学会参加の学生や、学会参加者以外の一般の方にも参加いただいた。また、今回農芸化学会で初めておこなった教育講演(25〜27日)では、軽食(ミシュラン3星シェフ監修のパンと飲み物)が提供され、一般講演前の朝の時間に連日200名を超える多くの参加者に聴講いただくことができた。パネルディスカッション形式の「これから100年の農芸化学研究を展望する」では、ゼンショーホールディングスの協賛により、未来をテーマにした牛丼が提供され大盛況であった。その他、さまざまな環境・立場にいらっしゃる学会員が参加しやすい学会を目指す企画として、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)シンポジウム(26日)を開催した。

大会期間中、休憩場所で提供した飲料などは、数多くの農芸化学会関連の企業からご寄附いただいたものである。ランチョンセミナーの共催をいただいた企業も含め、ご協力いただいた企業さまにはこの場を借りてお礼を申しあげる。

最後に、本大会の開催にあたり会場をご提供いただいた東京農業大学、ご支援いただいた多くの協賛企業、準備段階から背後で多くの雑務を引き受けていただいた農芸化学会事務局メンバーに、大会実行委員を代表して厚くお礼を申し上げる。今回は、100年に一回の大イベントであり、私たち現役にとっては最初で最後の「大祭」として、多くの特別企画を開催したこともあり、企画・運営いただいた先生方、特にSocial Gatheringの担当の先生方に多大なるご尽力をいただいた。年大会は、学会の顔となる、重要なイベントである。今回きりの企画が多かったとはいえ、今後も、実行委員会が、学会事務局、理事会、委託業者との連携を強化することで、より魅力的で、より活発な大会を目指していただくことを切に願う。

(文責 2024年度大会総務 松島芳隆、葛山智久)