2025年度札幌大会を顧みて
日本農芸化学会2025年度大会(実行委員長 園山慶 北海道大学大学院農学研究院教授)は、2025年3月4日(火)から8日(土)までの5日間にわたり、札幌コンベンションセンターとグランドメルキュール札幌大通公園を会場として開催された。札幌での開催は、2016年以来9年ぶりである。
会期は、主会場となった札幌コンベンションセンターでのポスター発表件数の調整により、通常の年次大会会期である4日よりも1日長い5日間開催となった。事前登録者数は例年を下回ったが、当日登録が640名を超え、総参加者数3,755名(前年4,183名)であり420名程度の減少となった。一般講演数は1786件(前年1493件)であり、昨年度と比較して300件近くの増加となった。春の北海道という開催地の魅力が参加者を後押ししたと考えている。今大会では懇親会を除く行事のすべてを札幌コンベンションセンター内で開催することができた。特に授賞式、一般講演、大会シンポジウム、附設展示会を全て一つの建物内に集約できたことで、参加者にとってきわめて利便性の高い大会となった。3月初旬の開催で雪による交通障害等を懸念していたが、交通網全般に影響を与えるような降雪はなく、大きなトラブルなく日程を進めることができた。強いて言及するなら、旅客機の到着が遅れシンポジストの到着がギリギリとなった事例が生じたが、これは鹿の飛行場内への侵入によるものであった。
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| 札幌コンベンションセンター外観 | 2025年度大会案内看板 |
大会初日は例年に従い、学会賞等授賞式後、学会賞(2件)・功績賞(2件)、昼休憩をはさんで、技術賞(3件)・女性企業研究者賞(3件)・若手女性研究者賞(1件、1名欠席)・奨励賞(9件)の受賞講演を実施した。参加者は452名にのぼった。
講演終了後は会場をグランドメルキュール札幌大通公園に移し、2019年東京大会以来となる懇親会を開催した。来賓として北海道大学 寳金清博総長を迎え、事前登録者566名、総数661名の方にご参加いただき、久しぶりの懇親会に農芸化学会らしい熱い議論に花を咲かせる方々が非常に多かった。北海道内の酒造会社,ワイナリーから御寄贈いただいたお酒、ワインのコーナーが設けられ、概ね好評であった。
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| 西山会長の懇親会時挨拶 | 懇親会の様子 |
大会2日目は午前・午後にシンポジウム(分野融合連携(他学会連携)シンポジウム2件、BBB連携シンポジウム2件、会員公募シンポジウム5件、参加者計1,476名)を開催した。昼にはランチョンセミナー(3件)、JABEEランチョンシンポジウム、BBBランチョンセミナーを実施した。
3日目は午前・午後にシンポジウム(分野融合連携(他学会連携)シンポジウム1件、会員公募シンポジウム7件、計1,510名)を開催した。昼にはランチョンセミナー(4件)を行い午後には2025年度産学官学術交流フォーラムにおいて「農芸化学企画賞受賞者報告会」(8名)の後、「農芸化学が拓く希望の食卓」と題して産官学の専門家の方6名に講演いただいた。
4日目は午前・午後にシンポジウム(分野融合連携(他学会連携)シンポジウム1件、会員公募シンポジウム7件、参加者計1,456名)をを実施し、昼にはランチョンセミナー(2件)、DE&Iランチョンシンポジウムを行なった。
この日は午前中から高校生によるジュニア農芸化学会を、全国から学生103名、引率教員42名、計145名の参加により開催した。発表数39件の中から金賞1件(山形東高校)、銀賞2件(兵庫県立姫路東高等学校、鈴鹿工業高等専門学校)、銅賞4件(茗溪学園高校、和歌山工業高等専門学校、広島県立広高校、福岡工業大学附属城東高等学校)が選出され、園山大会実行委員長から受賞校に表彰状等が授与された。ジュニア農芸化学会開催に当たっては文部科学省、科学技術振興機構、札幌市教育委員会、北海道教育委員会、北海道大学農学部など多方面からの後援を受けたことに対し、深く感謝の意を表する。
5日目は午前中にシンポジウム(会員公募シンポジウム3件、参加者計560名)を開催し、昼にはランチョンセミナー(2件)を実施した。
最終日の午後から、札幌北広島クラッセホテル(北海道北広島市)において第30回 農芸化学Frontiersシンポジウムが開催された。講師6名に加えて76名の参加があり、シンポジウムおよび交流会を通して、活発な議論と意見交換が行われた。参加者の満足度は高いシンポジウムであった一方、本大会初日からFrontiersシンポジウム最終日までは6日間と長期になったことからFrontiersシンポジウムへの参加を断念したという声も耳にした。Frontiersシンポジウムの開催日については、今後の検討事項かもしれない。
一般講演(延べ1786件)は全てポスター発表とし、午後のシンポジウム前に発表コアタイム(1時間×2)を設定し、ポスター発表の利点である発表者との近い距離における熱い議論が促進された。 ポスター発表会場と同じフロアにて、機器・試薬・書籍等展示会(68社)を行ったため、ポスター会場と展示会場の行き来が活発となり,参加者・展示出展者双方にとって有益な展示会となったと考えている。 また、大会期間中、休憩場所で提供した飲料などは、数多くの農芸化学会関連の企業からご寄附いただいたものである。ランチョンセミナーの共催(財政的支援)をいただいた企業も含め、ご協力いただいた企業にはこの場を借りてお礼を申し上げる。
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| ポスター会場の様子 | ジュニア農芸化学会 産学官学術交流フォーラム会場 |
ご支援いただいた多くの協賛企業、準備段階から背後で多様な雑務を引き受けていただいた農芸化学会事務局メンバーに厚くお礼を申し上げる。また、本大会の運営はECH(イベント&コンベンションハウス)、エー・イー企画に委託し、大会実行委員会の負担が大幅に軽減できた。一方で大会経費の削減も運営上の課題として挙げられている。
今後、実行委員会が、学会本部、委託業者との役割分担をさらに明確化した上で連携することで、効率的かつ持続可能な大会運営体制の構築が求められる。
(文責 2025年大会総務 橋本 誠)








































