報告

5月17日(木)仙台にて、市民公開講座を第66回日本栄養・食糧学会大会と合同で開催しました。約100名の方にご参加いただき、大盛況な市民公開講座となりました。

今回、『産学官民の「食の安全・安心」へのそれぞれの取り組み』と題し、産・官・学・民から1人ずつ4人の先生方に安心して食事をするために必要なそれぞれの取り組みを紹介していただき、研究者のみならず一般市民の皆さんにとって大切な「食の安全・安心」について、一層の理解を深めて頂きたくこの企画を行いました。

最初の演者は、学から福田伊津子先生(神戸大学大学院農学研究科)に「食品によるダイオキシン毒性の予防・軽減の可能性」と題してご講演いただきました。講演では、食品の中でも肉や魚、卵といった脂質の多い食品へのダイオキシン類の汚染量が高いことから、野菜や果物、茶といった植物性食品を継続的に、かつ積極的に摂取することを心がけてバランスの良い食事をとることが大切で、それによって毒性発現を軽減できるという内容を発表していただきました。

次に、官から五十君靜信先生(国立医薬品食品衛生研究所)に「国際協調を重視した規格基準作りによる食品の安全確保とリスクコミュニケーション」と題してご講演いただきました。講演では、最初に食品の微生物基準設定に関連する国際情勢についてまとめ、数的指標とはどのような考え方であるか、また生食用牛肉の規格基準がどのような内容であるかを解説していただき、国際協調を考慮した規格基準は今後どのような形で、国民に理解されてゆくかについて発表していただきました。

次に、民から鬼武一夫(日本生活協同組合連合会)に「食品の安全と品質保証 ~リスクアナリシスの重要性~」と題してご講演いただきました。講演では、昨年の東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う食品の放射性物質問題や、食品の安全と品質保証の枠組み、会員と協力をした2011年11月から「家庭の食事からの放射性物質摂取量調査」データについて発表していただきました。

最後に、大島悟先生(株式会社明治)に「(株)明治における乳製品の安全性と品質保証への取り組み」と題してご講演いただきました。講演では、乳製品事業における食品安全と品質保証への取り組みについて、「明治食品安全委員会」、「明治クオリアス」を中心に最新の事例を踏まえながら発表していただきました。

最後に総合討論を行い、食の安心・安全について多くの質問が演者の先生に寄せられ、密度の濃い討論会となりました。今後もこのような市民参加型の企画も行っていきたいと考えています。

市民公開講座:産学官民の「食の安全・安心」へのそれぞれの取り組み-1

市民公開講座:産学官民の「食の安全・安心」へのそれぞれの取り組み-2

概要

主催 日本栄養・食糧学会
共催 日本農芸化学会産学官若手交流会(さんわか)、日本食品科学工学会
日時 2012年5月17日(木)13:00~16:10
会場 141ビル(仙台三越定禅寺通り館)エルパーク仙台・ギャラリーホール
プログラム I. はじめに(13:00~13:05)
第66回日本栄養・食糧学会会頭 駒井三千夫


座長 本田孝祐 (大阪大学大学院工学研究科)
II. 「学」による食の安心・安全への取り組み(13:05~13:45)
「食品によるダイオキシン毒性の予防・軽減の可能性」
福田伊津子 先生(神戸大学大学院農学研究科)

III. 「官」による食の安心・安全への取り組み(13:45~14:25)
「国際協調性を重視した規格基準作りによる食品の安全確保とリスクコミュニケーション」
五十君靜信 先生(国立医薬品食品衛生研究所)


座長 小堀俊郎 ((独)農業・食品産業技術総合研究機構)
IV. 「民」による食の安心・安全への取り組み(14:25~15:05)
「食品の安全と品質保証 ~リスクアナリシスの重要性~」
鬼武一夫 先生(日本生活協同組合連合会安全政策推進室)

V. 「産」による食の安心・安全への取り組み(15:05~15:45)
「(株)明治における乳製品の安全性と品質保証への取り組み」
大島 悟 先生 (株式会社明治技術開発研究所)


座長 北野克和 (東京農工大学大学院農学研究院)
VI. 総合討論(15:45~16:05)

VII. おわりに(16:05~16:10)
「さんわか」世話人代表 北野克和
参加費 無料
事務局 東北大学大学院農学研究科 食品化学分野 都築 毅
(tsuzukit@biochem.tohoku.ac.jp、@を半角に変更してください)