団体名 (千葉県)成田高等学校
開催日 2021年10月28日(木)
場所 成田高等学校(成田市成田27番地)
授業の名称 「小さな微生物の大きな力-人間は微生物の力を借りなければ生きられない-」
講師 葛山 智久 氏(東京大学大学院 農学生命科学研究科分子育種学研究室 教授)
聴講者 成田高等学校1年生 35名
報告

模擬講義を受講するにあたり事前に葛山先生から頂戴した2つの課題に取り組みました。内容は「微生物に対するイメージ」と「培地上でのアオカビと大腸菌の繁殖」に関するもので、生徒たちは限られた知識の中でいろいろと考え想像を膨らませました。講義当日は2部構成で実施しました。第1部ではこの課題に対する答えを皮切りとして、葛山先生から最新の見解をもとにわかりやすく説明していただきました。ヒトの体内に常在する微生物は100~1000兆個にもおよび、その種類も数千種類と膨大であること、そしてこれらの微生物が絶妙なバランスを保ちながら私たちの命を支えていることには驚きました。またアオカビが産生するペニシリンに始まり、様々な薬物の発見とそこで微生物の果たした役割はまさにセレンディピティと呼ぶにふさわしく、「私は微生物に勉強させていただいている」という大村智先生の言葉はとても印象的でした。第2部の質疑応答では、生徒からの質問に対して葛山先生がご自身の体験をもとに丁寧に答えてくださいました。生徒からは「身の回りにある限られた元素をつかってなぜ微生物を殺すような薬品をつくれるのか」「RNAの変異のしやすさを逆に利用して薬を作れないか」「ウイルスは次々と変異するのになぜPCR検査ができるのか」など、分子生物学の核心に迫るような質問も次々と飛び出し白熱しました。葛山先生の授業を受ける前と後では、生徒たちの生命科学に対する世界観は大きく変わっていました。今回の先生のご講演をきっかけとして、改めて「何のために大学に進学するのか」ということ、そして「大学に進学してからが本当のチャレンジなんだ」ということに触れることができました。たいへん貴重な機会を頂戴したこと、この場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。

授業風景

写真

生徒さんの感想

  • 先生は知識のない私たちに向けて微生物を使った薬など身近にあるものをあげて私たちに微生物のイメージしやすく教えてくださいました。また質問にもわかりやすく答えてくださりとても面白かったです。これから多くを勉強して、先生の研究していることもわかるように頑張ります。
  • 私は生物の持っている力に興味があり、特に微生物が二次代謝で作った物質が他の微生物を殺す仕組みについては微生物のすごさを痛感しました。
  • 微生物は発酵食品や腸内細菌による消化、医薬品としての利用の一方で、腐敗や感染症の原因など私たちに不都合にはたらく場合も多く、要は使い方次第なのだろうと感じました。
  • 大村智先生の言葉に「21世紀の諸問題の解決のためのヒントは微生物の中にある」とあったのを覚えています。21世紀を生きてゆく私たちにとって、とても重要なテーマなのだと思いました。
  • 私は文系なので内容はかなり難しく感じましたが、小さな微生物がヒトの生活を支えてくれていると思うと、微生物に感謝しなければと思いました。
  • 農学部は農業に関することしか扱っていないと思っていましたが、先生のお話を聞いてヒトの生活や健康に直接関わることを学べる場所なのだと感じました。
  • 私は病気を治すメカニズムを研究したいと思っています。これまでは病気に強い物質を使って薬をつくるのだろうと考えていましたが、微生物をつかって薬を作れることを知り視野が広がりました。
  • これまでに承認された医薬品の約4分の1が微生物に由来していると知り、本当に驚きました。微生物の力を借りれば、治療困難な病気も治せるような薬をつくることができるのではないかと感じました。
  • 新型コロナウイルス感染症をはじめ、最近は人や環境に関わる話題が多いですが、先生の話を聞いて、正しい知識を身に付けることで誤った情報を信用したり他人に迷惑をかけない生き方ができるのだと感じました。
  • 人体には細胞の数の何倍もの微生物がいて、ビタミンKを作るなど重要なはたらきをしていることを知りました。微生物と人は切っても切れない関係で、人の生活をより良くしてくれる存在なのだと感じました。
  • 先生が楽しそうにお話をされているのを見て、好きなことに打ち込むのは大切なことなのだと思いました。私も将来は、大好きな動物のためになる仕事について、夢中になって仕事をしたいと思いました。