団体名 (千葉県)私立成田高等学校
開催日 2022年11月29日(火)
場所 成田高等学校(成田市成田27番地)
授業の名称 ビフィズス菌の酵素のかたちを知る ~ヒトとの共生関係について~
講師 伏信 進矢 氏(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)
聴講者 成田高等学校2年生67名
報告

講義は2部構成で実施されました。

第1部では伏信先生のご紹介に始まり、農芸化学の歴史とそこで活躍した研究者の物語をわかりやすく説明していただきました。米ぬかからビタミンB1を発見した鈴木梅太郎先生や、植物ホルモンのジベレリンを発見した薮田貞治郎先生の研究などは、高校の教科書ではあまり深く触れずに通り過ぎてしまう部分ですが、ここに農芸化学の黎明期を形作った諸先生方の情熱があるということを伏信先生に教えていただき、生徒たちは感動と共に深く聞き入っていました。

第2部ではビフィズス菌の酵素とヒトとの共生関係について、伏信先生ご自身の研究内容を交えながら説明していただきました。酵素やタンパク質の立体構造の話はたいへん難しく、生徒たちは自身の知識不足を感じながらも、生命の不思議を体感していました。また質疑応答では「酵素は熱に弱く、食品法で加熱処理が義務付けられているなかで、どうやって有効な酵素を効果的に摂取すればよいのか。」「試験や部活の大会前におなかが痛くなることがあるが、腸内環境を整えることで改善できるのか。」「腸内細菌叢を改善することで、なぜ体の調子がよくなるのか。」と言った質問があり、中には「酵素を体内に入れると、タンパク質は一度分解されてしまうため効果がないと生物の授業で教わりました。しかし、過去に分解された酵素は体内で生成されやすくなるという説を聞いたのですが、先生はその学説についてどうお考えですか。」といった、生命科学の核心に迫るような質問もありました。これらの質問に対して、伏信先生はご自身の研究や体験をもとにひとつひとつ丁寧に答えてくださいました。

伏信先生の授業を受ける前と後では、生徒たちの生命科学に対する世界観は大きく変わっていました。今回の先生のご講演をきっかけとして、改めて「何のために大学に進学するのか」ということ、そして「大学に進学してからが本当のチャレンジなんだ」ということに触れることができました。たいへん貴重な機会を頂戴したことを、この場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。

授業風景

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生徒さんの感想

  • 授業で習った酵素のことを、日常に結びつけながら深く学ぶことができて楽しかったです。
     
  • 農芸化学がどんなものなのか知らなかったので、説明を聞いて興味を持ちました。進路を決めるときも、つい聞いたことのある学科だけを見ていたので、これからは内容をしっかり見て研究しようと思いました。
     
  • スライドを見た時は難しそうだなと思いましたが、実際に話をきくと楽しくて興味深い内容だなと思いました。将来は、化学と生物の知識を生かして食品や健康に関わりのあることをやってみたいと思っているので、お話を伺えてよかったです。
     
  • 生物で習った単語や日常生活で耳にするような単語がたくさん出てきて、とても面白く、あっという間に時間が過ぎてしまって驚きました。とても楽しかったです。貴重なお話をありがとうございました。
     
  • 先生のお話しを聞いて、大学を選ぶ際にはもっと研究している内容や研究室のことも見てみようと思いました。まだはっきりと進路は決まっていませんが、研究は楽しそうだなと思いました。
     
  • 酵素の導入を身近な所から説明してくださり、その後の内容がスムーズに入ってきました。普段の授業ではあまり知らない切り口から、酵素やタンパク質を知ることができました。
     
  • 酵素や酵母の存在は知っていましたが、それが何のことなのかが分かりませんでした。今回のご講演で知ることができ、とても面白かったです。
     
  • 同じ「酵素」を調べても日本語と英語では全然検索結果が異なり、得られるものが変わってしまうことに大きく衝撃を受け、英語の勉強を頑張ろうと思いました。ペットボトルを分解できる酵素が名前によって知名度に差が出てしまうことに、とても納得できる部分があって面白かったです。
     
  • 酵素にたくさんの種類があって、1年で300種類も増えていることにびっくりしました。
     
  • 赤ちゃんの腸内にビフィズス菌が多いということを知って驚きました。私たちの身近なところから例を出してくださったので、とてもわかりやすかったです。
     
  • 腸内細菌と脳の健康が関係してるかもしれないという事実を知りすごいと思いました。
     
  • 海藻を消化する酵素が日本人にしかないことは知っていましたが、その研究を外国人がやっていたことは知らず、どうしたらそのような研究をしようとひらめくのかとても不思議に感じました。研究者はすごいなと改めて思いました。
     
  • 年齢を重ねるにつれて腸内細菌の種類が変わっていくことがとても興味深かったです。
     
  • 名前や性質は知っていても実際に見たことのない物質が多く、これらをモデルで見たり腸内細菌の具体的な動きの話がとても面白くて興味が湧きました。
     
  • 酵素の形や構造がおもしろいと感じました。また、糖質はとても多くの種類があるのに、実際には人体の2%ほどしかないことがとても印象に残っています。