第16回男女共同参画学協会連絡会シンポジウム
「今なお男女共同参画をはばむもの 新たな次のステップへ」

2018年10月13日(土)10:00~17:00、上記のシンポジウムが建築会館ホール(東京都港区)にて、男女共同参画学協会連絡会の主催で開催された。昨年同様、内閣府男女共同参画局、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、科学技術振興機構、日本学術会議、日本経済団体連合会、経済同友会、日本商工会議所、国立大学協会、日本私立大学連盟、国立女性教育会館が後援となり、産学官に亘って取り組むべき重要課題であることは言うまでもない。

日本農芸化学会は、2019年11月から2020年10月まで、男女共同参画学協会連絡会の幹事学会を担当することが決定している。それを見据えて、本学会の男女共同参画委員会からは裏出令子氏(京都大学)、熊谷日登美氏(日本大学)、辻智子氏((株)吉野家ホールディングス)、鈴木義人氏(茨城大学)、藤原葉子氏(お茶の水女子大学)、上田賢志氏(日本大学)、吉永直子氏(京都大学)、伊藤紘子氏(日本大学)、恩田真紀(大阪府立大学)の9名がこのシンポジウムに出席した。

午前の部(10:00~11:00)は個別テーマセッションで、「Unconscious biasについて考える」というタイトルで大坪久子氏(日本大学・上席研究員)が、これと並行して「ヒューリックのダイバーシティ経営~経営戦略に生かす女性活躍推進~」というタイトルで浦谷健史氏(ヒューリック常務執行役員開発推進部長)が、それぞれ講演した。前者において、日本農芸化学会は講演記録係を任じられ、1時間ものスピーチを隈なく文字に起こすという膨大な労力を要する業務を、裏出氏が一手に引き受けた。講演内容は、様々な実例やデータを趣向凝らして示すのみに留まらず、聴講者に対するアンケートやクイズ等を取り入れたアクティブなもので、聴講者自身がいかに「無意識の偏見」に支配されているかを知らしめる鮮烈なものであった。

昼の部(11:00~13:00)ではポスターセッションが行われ、日本農芸化学会を含む45の加盟学協会が活動報告を行った。昼食時間を兼ねているにも関わらず、多くの参加者が食事もそこそこにブースを訪れ、活発な議論が交わされた。日本農芸化学会における昨年度の男女共同参画活動のトピックスの1つは、やはり『農芸化学分野のロールモデルたち』の刊行であろう。実際、本学会の発表ブースを訪れたほぼ全員が、このロールモデル集を手に取り、内容や刊行に至った経緯について多くの質問があった。また、吉永氏による美しい表紙デザインや上質な製本も好評で、しっかりとした形ある物が持つ"説得力"の大きさを感じた。

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写真1:ポスターセッションにおける本会活動報告

また、ジュニア農芸化学会についても非常に大きな関心が寄せられた。男女共同参画における重要課題の1つがSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)分野での男女格差の解消で、政府機関や多くの学協会で女子生徒に対する理系進学支援の取り組みがなされている。ジュニア農芸化学会は女子に限定したイベントではないが、参加者の半数が女子で逆格差も無く、「男女共同」「格差解消」の観点にむしろ合致している。高校生の研究発表の場としては他に類のない規模で、発表内容のレベルも高く、何より、研究内容の詳細を学会ホームページ内のサイト「化学と生物 農芸化学@High School」で広く公開している点が素晴らしいとの評価を受けた。

午後の部(13:00~17:00)では先ず全体会議が行われ、3題の基調講演の後、「次のステップへ向けて-私の経験から」というテーマで、5つの講演と講演者らによるパネル討論が行われた。起業した社長、官公庁役人、大手ゼネコン社員、アカデミックの研究者と、文字通りダイバーシティなバックグラウンドを持つ男女演者から様々な提言がなされた。環境、経験、性別を含む身体的な特徴、能力、人はそれぞれに(優劣ではなく)多様である。そして、均一性を優先することが合理的で高効率であるという考えから、複雑な環境変化に対応するためにダイバーシティが重要であるという認識に社会は変わりつつある。しかしながら、「重要」とされてはいるものの、その実現のために実際に活動に携わっている者は組織の一部で、特定の人々に負担が偏る問題も生じている。重要・必要と考えられている本活動が、社会全体を巻き込んだ大きなうねりとなり、負担においても格差が解消されることを願っている。

なお、本シンポジウムの詳細については、以下のサイトに掲載される報告書を参照ください。
https://www.djrenrakukai.org/symposium1.html#symposium

大阪府立大学
恩田真紀