第20回男女共同参画学協会連絡会シンポジウム
「男女間の積極的格差改善措置(女性限定公募・クオータ制など)について考える〜より公平な社会の実現を目指して〜」

2022年10月8日(土)10:00~17:00、上記のシンポジウムが、東京大学浅野キャンパス武田先端知ビル武田ホールにおいて、主催:男女共同参画学協会連絡会(幹事学会は一般社団法人日本生物物理学会)、後援:内閣府男女共同参画局、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、日本学術会議、国立研究開発法人科学技術振興機構、独立行政法人国立女性教育会館、一般社団法人国立大学協会、一般社団法人日本私立大学連盟により、オンラインを融合させたハイブリッド形式で開催された。約250名の参加者があり、本学会のダイバーシティ推進委員会からは野尻秀昭委員長(東京大学)、恩田真紀氏(大阪公立大学)、園木和典氏(弘前大学大学)、丸山明子氏(九州大学)、丸山千登勢氏(福井県立大学)、船戸耕一(広島大学)、また事務局から田部有美子氏の計7名がこのシンポジウムに参加した。

午前の部(10:00~11:30)では、本年が男女共同参画学協会連絡会が設立されて20年の節目の年であることから、男女共同参画学協会連絡会第20期運営委員長の原田慶恵氏による開会挨拶、続いて東京都知事の小池百合子氏による祝辞ののち、5年ごとに実施している科学技術系専門職の男女共同参画実態調査が報告された。はじめに、日本生物物理学会の須藤雄気氏(岡山大学)から男女共同参画実態調査結果の概要報告が、続いて日本原子力学会の岡田往子氏(東京都市大学)から実態調査における自由記述回答の紹介が、最後に日本生理学会の志牟田美佐氏(東京慈恵会医科大学)から「『戦略』から『実装』への転換-女性研究者登用をイノベーション創出の切り札とするには-」という演題で、実態調査に基づく提言・要望について紹介された。須藤雄気氏の講演では、これまでの調査を上回る 19,000 件超の回答数を得た第5回の大規模アンケートから、女性研究者・技術者が置かれている現状がどのようなものであり、どのように変化してきているのかを、男性研究者・技術者の現状とともに解析した内容を紹介された。岡田往子氏の講演では、3719名から寄せられた自由回答を分析、自由記述回答者の70%以上が30歳代~50歳代の年代の方であり、また45歳 代~65歳未満の女性回答者数は同じ範囲の年齢の男性回答者数を上回っていたことから、この年代の女性の関心の強さ、置かれている状況の厳しさがあると考察された。そして、「人類の半数は女性です。その女性の能力を遺憾なく発揮できる社会を作っていきませんか」と締めくくられた。志牟田美佐氏は、文部科学省及び内閣府に対して提言・要望について、1)女性研究者の雇用体制・研究費等の申請における年齢制限の大胆な緩和、及び、任期付き職の任期なし職への定着促進、2)大学・高等教育研究機関等における女性研究者割合、 特に執行部・上位層の戦略的な増加のための積極的是正措置、3)研究推進において国際的に不可欠である、大学・高等教育研究機関等における女性研究者の旧姓使用に関する現状調査、及び普遍化のための是正措置の3つの要望を要望書の骨子にすることが報告された。

昼の部(11:30~13:15)にはポスターセッションがあり、27の加盟学協会、ワーキンググループ、そして3つの大学から、男女共同参画に関する活動やアンケート調査などが報告された。

午後の部(13:15~17:00)では、先ず幹事学会である日本生物物理学会会長の野地博行氏による挨拶、続いて来賓として内閣府男女共同参画局局長の岡田恵子氏と文部科学省 大臣官房審議官(科学技術・学術担当)の阿蘇隆之氏からの挨拶のあと、4題の基調講演が行われた。最初の基調講演は、山田・尾崎法律事務所代表・弁護士の山田秀雄氏から「弁護士会における男女共同参画推進特別措置(女性副会長クオータ制等)の導入について」という演題で、弁護士会において、役員や管理職などの女性の割合をあらかじめ一定数に定めて積極的に起用する制度である「クオータ制」が導入されるまでの経緯や導入後の弁護士会における女性活躍の状況について紹介いただいた。次の基調講演である上智大学の三浦まり氏の「候補者均等法の可能性:数値目標の効果と課題」では、政治分野における女性割合の数値目標やクオータ制の実例を紹介いただき、なぜクオータ制が必要か、またクオータ制を効果的に用いるためにはどのような措置を合わせて講じる必要があるのかについてお話しいただいた。続く基調講演では、東北大学大学院工学研究科長の湯上浩雄氏から、「東北大学工学研究科のDEI推進プロジェクト」と題して、東北大学ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)推進宣言の下で立ち上がった工学研究科DEI推進プロジェクトの取り組みの内容についての詳細な紹介があった。最後の基調講演では、一般社団法人Waffle 理事長の田中沙弥香氏から、「Waffleの活動と格差是正のためにすべきこと」と題して、IT分野のジェンダーギャップを埋めるために設立されたWaffleのこれまでの活動と、格差改善のために今後すべきことについてお話しいただいた。

休憩を挟んで、パネリストとして基調講演をして頂いた山田秀雄氏、三浦まり氏、湯上浩雄氏、田中沙弥果氏、ファシリテーターとしてお茶の水女子大学の佐々木成江氏の5名でパネル討論が行われた。先ず、パネリストの方々が順番に、午後の講演についての感想を述べられた。次に、クオータ制が違法なのかについて、弁護士の山田秀雄氏からご説明があり、世界各国の会社で導入されている役員クオーター制の情報提供、その上でクオーター制が導入されていない日本の現状について議論された。さらに、女性優先採用やそれが一部で逆差別であると言われていることについても討論された。最後に、パネリストから一言ずつ今回のシンポジウムについてご意見を述べられたのち、パネル討論が終了した。

最後に、本シンポジウムの内容を簡単にまとめた後に、第20期運営委員長の原田慶恵氏からご挨拶が、そして、第21期幹事学会の宮下直氏と半場祐子氏からご挨拶があり、閉幕した。

広島大学
船戸耕一