平成29年度「女子中高生夏の学校2017~科学・技術・人との出会い~」

独立行政法人・国立女性教育会館が主催する上記イベントが、今年も8月5日から8月7日(月)まで、同会館にて開催された。本プログラムは、JST(国立研究開発法人 科学技術振興機構)が支援する次世代人材育成事業の1つで、今年で13年目となる。

本年は、中高生104名、保護者・教員21名が参加し、期間中、女子中高生の理系進路選択を支援する多彩な科学体験プログラムが、2泊3日の合宿形式で実施された(詳細は以下のURLを参照)。
https://www.nwec.jp/event/training/g_natsugaku2017.html

このイベントには多くの学協会が協力しており、特に"サイエンスアドベンチャーII「研究者・技術者と話そう」"というプログラムでは、日本農芸化学会を含め、今年は40団体が出展し、各々のブースで趣向を凝らした演示実験を実施、それぞれの学術分野の魅力をアピールした。

日本農芸化学会からは、昨年に引き続き恩田真紀(大阪府立大学)と、中高生と世代が近いロールモデルとして老木紗予子氏(京都大学大学院農学研究科 博士後期課程)が出席し、身近にある材料を利用して「食・環境・生命を化学的に研究する」面白さを演示した。食や健康、環境問題に関心がある女子中高生は非常に多く、たくさんの生徒が途絶えることなくブースに訪れ、展示を熱心に見聞きし、活発な質問がなされた。印象的だったのは、「すごく化学なんですね」という如何にも女子中高生らしい感覚的な言葉で、中学・高校では「生物」や「家庭」に分類される分野を、化学的視点で研究する農芸化学に非常に興味を持ったようであった。

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サイエンスアドベンチャーIIにて、生徒に説明をする老木紗予子氏

サイエンスアドベンチャーIIに続いて行われた"Gate Way"というプログラムは、女子中高生が理系進路について更に深く知るためのもので、科学者・技術者・TA(理系の女子学部生・院生ボランティア)からアドバイスを受ける企画である。中高生にとって現実的かつ切実な悩みは、勉強方法や理科の選択(物理/生物)、学部・学科選びであり、ここでは生徒達に近い世代の老木氏の力が大いに発揮された。

本プログラムにおいて多く聞かれたのは、「どこの学部・学科を受験すればいいか分からない」という質問で、近年、農学部の名称が変更されるなど、生物科学に関わる領域の学部・学科名が複雑化し、中高生にとっては何が学べるのかイメージしにくいようである。一方で、医学や薬学などは理解しやすく、彼女達にとっては目標にし易いのかもしれない。

夕食後、19時15分からは"サイエンスカフェIII「女性研究者・女性技術者との座談会」"という保護者・教員と、女性技術者・研究者との座談会が開催され、21時過ぎまで大いに議論が盛り上がった。生物や化学が好きな女子中高生の保護者にとって、医薬系や理科教員以外に、どのような進路があるのかは大きな関心事である。日本農芸化学会からは恩田が出席し、応用的な学問である農芸化学の魅力を紹介すると共に、どのような業種に就職できるか、女子の採用状況についてはどうかについてデータを基に解説した。

本イベントを通じ、食品や遺伝子操作、微生物に興味がある生徒は非常に多いという実感を持った。しかし、相当数の生徒達が、自分の興味にフィットした学部・学科を見つけることに苦慮し、進路選択に悩んでいるように思えた。今後も、若い世代に農芸化学という学問領域の魅力をアピールし、広め続ける必要があることを痛切に感じた。

大阪府立大学
恩田真紀