「女子中高生夏の学校2023 〜科学・技術・人との出会い〜 」

本イベントは、女子中高生の理系進学支援を目的とし、科学技術振興機構(JST)をはじめ多くの団体・学協会の支援により開催されてきた。今年は8月5日から8月7日にかけて国立女性教育会館(埼玉県比企郡嵐山町)にて、NPO法人女子中高生理工系キャリアパスプロジェクトの主催で実施された。本年度は4年ぶりの対面開催となり、98名の女子中高生が2泊3日の合宿を通して、38の協力団体が実施する実験・実習やポスター・キャリア展示を体験した。(詳細は以下のURLを参照)
http://natsugaku.jp/category/夏学2023/

日本農芸化学会からは八波利恵博士(東京工業大学 生命理工学院 准教授)と亀谷将史博士(東京大学 農学生命科学研究科 助教)と、中高生と世代が近い TA として仙波玲奈氏(東京工業大学 生命理工学院 学部4年)と中川仁一朗氏(東京大学 農学生命科学研究科 修士1年)が参加した。
「研究者・技術者と話そう」というポスター展示プログラムでは、学協会・企業の全37団体が出展し、それぞれの分野の魅力を伝えた。日本農芸化学会は「身近で役立つバイオの主役!農芸化学」と題し、農芸化学の特徴と魅力を紹介すると共に、酵素や微生物による触媒活性を可視化する実験を通じて、日常生活に結びつく農芸化学分野の研究の日常生活への結びつき体感してもらった。

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        進路・キャリア相談カフェ

その後、「進路・キャリア相談カフェ」が開催された。このカフェは、農学、生物、化学など分野ごとにわかれたブースで、女子中高生が科学者や大学生と交流できる場であった。これまで科学者がどのような道を辿っていったのか、現在どのような研究を行っているのか、など生の声を直接聞ける場であり、どこのブースにも多数の参加がみられた。生徒が今後の将来像を描くために、貴重な時間であったと思う。中には、「数学が大好きでその道に進みたいが、将来仕事としてどのような道があるかわからず、進むべきか悩んでいる。」といった質問もあがった。その際、同じような経験をした科学者から、「好きなことに邁進することはとても良いと思う。ただ別の道として、数学を使って、農学、生物などを研究するという道もある。」といったアドバイスがなされた。生徒からは「視野がひらけた」といった感想が得られ、まさに違うバックグラウンドをもつ研究者が集まったために生まれた一言だと感じた。また、苦手科目の勉強法をテーマとしたブースでは、「国語が苦手です。どうやって勉強したらいいのでしょうか。」という質問があがった。それに対し、TAとして参加した大学生は「1日1回でも文章に触れる。短い時間でもいいから続けることが大事です。」と答えていた。今悩んでいることに対し、経験を踏まえた的確な答えだと思った。この他、「建築科に進学したいが、今回は該当するブースがなくて残念です。」といった感想も寄せられた。近年は、女子高生の理系分野への進学者が増えつつある。現在大学入試制度は、一般選抜型入試に加え、学校推薦型、総合選抜型入試など多様化している。さらには、入試に女子枠を設ける大学も増えている。そのため、女子高生の理系分野への進学者増加は、今後も続くと予想される。本イベントは上述したように、多様な団体・学協会の支援により開催されているが、このような生徒の声に応えられるよう、新たな団体・学協会の参加を期待したい。 

「冒頭で述べた通り、今年の開催は、コロナ禍以来4年ぶりの対面実施であった。筆者は昨年まで何度かオンライン実施の学会にも参加しているが、やはり対面実施の交流にはオンライン実施では得られない密な交流が生まれると感じている。猛暑の埼玉での開催であったが、これからの科学界を背負っていく女子中高生が幅広い世代の研究者の話を熱心に聞いている姿から、彼女たちが熱い3日間を過ごしたものと確信した。今後もこのようなイベントが続いていくことを切に願う。

東京工業大学 八波利恵
東京大学 亀谷将史