「女子中高生夏の学校2025〜科学・技術・人との出会い〜 」

本イベントは、女子中高生の理系進学支援を目的として、科学技術振興機構をはじめとする多くの団体・学協会の支援のもと、NPO法人女子中高生理工系キャリアパスプロジェクトの主催により開催された。本年は、8月9日から8月11日にかけて、国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区)を会場として実施された。全国29都道府県から参加した90名の女子中高生が参加し、33名の学生TAのサポートを受けながら、協力団体(総勢252名)による実験実習、ポスター展示・キャリア相談、学生企画プログラムを体験した。(詳細は以下のURLを参照)
https://natsugaku.jp/category/natsugaku/natsugaku2025/

日本農芸化学会からは小川哲弘博士(東京大学大学院農学生命科学研究科 助教)と山田千早博士(明治大学農学部 専任講師)、さらにTAとして渡邊彩音さん(東京大学大学院農学生命科学研究科 修士課程1年)、高村和花さん(明治大学大学院農学研究科 修士課程1年)、佐々木舞さん(明治大学農学部 学部4年)が参加した。

「研究者・技術者と話そう」と題したポスター展示プログラムには、総勢40の学協会・企業が出展し、それぞれの分野について説明を行った。日本農芸化学会は「身近なバイオテクノロジーを「体感」しよう!」をテーマに、農芸化学という学問分野の特徴と魅力を紹介した。具体的には、有用微生物と日常生活との関わりを紹介するとともに、実際にプレート培養した微生物を観察してもらった。また、微生物が生産する酵素の機能についても説明を行い、農芸化学を身近に体感していただく機会とした。当日は、絶え間なく多くの生徒が訪れ、教員およびTAが休む間もなく対応するほどの盛況であった。特に、生きた微生物の観察には関心が寄せられ、参加者からは様々な質問をいただいた。中でも、環境保全に関心を持つ生徒から「農芸化学で環境問題について学べるのか」という質問があり、進路を模索する姿が印象的であった。またTAには、農学部を志望した理由、文理選択における悩み、農芸化学科を選んだ経緯、キャンパス内での男女比や授業の難易度、サークル活動との両立、さらには大学卒業後の主な就職先などについて具体的な質問が寄せられた。

「進路・キャリア相談カフェ」では、『農学』、『生物』、『化学』など教育科目分野ごとにブースを設け、生徒が関心のある分野の科学者や大学生と交流できる場を提供した。本企画には、渡邊彩音さんが相談役として対応し、「理系・文系の選択はいつまでに決めた方がよいか」、「理系科目の点数を伸ばすにはどうしたらよいか」といった、進路決定に直結する切実な質問も寄せられた。高校と大学とでは、理系・文系の区分が必ずしも一致しておらず、そうした点も含めて有益な情報提供が出来ていたようであった。また、すでに希望する職業を明確に持ち、そのためにはどの大学のどの研究室に進むべきかといった具体的な質問を投げかける生徒も見られた。一方で、学校の生物は苦手だが、今回の農芸化学会のポスター展示を通じて微生物と人間生活との密接な関わりを理解し、農芸化学に興味をもったという感想もいただき、我々にとって大きな喜びとなった

本年も猛暑の中での開催となったが、会場が東京都渋谷区というアクセスの良い都心に変更されたことで、TAや教員にとっても昨年度の埼玉開催よりは参加しやすくなったと感じられた。未来の科学界を担う女子中高生たちが、幅広い世代の研究者の話に熱心に耳を傾ける姿を目にして、参加者が充実した3日間を過ごしたことを確信した。今後もこのような意義のあるイベントが継続されることを心より願っている。

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東京大学 小川哲弘、 明治大学 山田千早