報告

1月21日に開催した本セミナーは大学・企業・公的研究機関から、130名以上の方にご参加いただき、盛況のうちに閉会いたしました。3名の先生から「生命科学のDX」というテーマに対して、AI・計算科学の活用、実験自動化・ロボティックバイオロジー、プロセス設計・実験計画のスマート化といった幅広い分野で講演をしていただきました。

  • 大上先生からは、タンパク質間相互作用(PPI)の事例を題材として、AI・計算科学を活用した生命科学研究についてお話を伺いました。PPIは抗体医薬の創薬モダリティでもありながら実験的手段では網羅的な検証が難しいところ、計算機を用いて膨大なPPI候補をラフな計算で獲得して解析するというスキームと、それを実装したMEGADOCK4というソフトウェアについてご紹介いただきました。またPPIを阻害する化合物の機械予測についてもご説明いただきました。これらのスキームはタンパク質構造などのデータベースの拡充や計算機能力の進歩・低コスト化によってさらに加速されるとの展望も示されていました。創薬に限らず、農芸化学研究における物質探索にも寄与しうる有用なお話を伺えました。
  • 神田先生からは、ロボットによる実験自動化が生命科学研究をどのように変容させるか概説いただきました。ウェットな実験におけるヒューマノイドロボットの優位性を解説いただくとともに、研究アイデアがあれば誰でもロボットに実験を発注して研究を進められるようになる、という展望もお示し頂きました。講演後半では細胞培養を例として、実験自動化を進めるためのマインドセットについて解説いただきました。ロボットは命令した作業を正確に行うので、研究者側ではプロセス設計を洗練させる必要があるというお話も伺いました。講演の後には視聴者から多くの質問をいただき、興味を持って聞いていただいた方が多かったようです。
  • 金子先生からは、推定モデルの構築による化合物設計・プロセス設計についてご説明をいただきました。目的の物性をもつ化合物や最適な製造方法を予測し、開発を高効率化するマテリアルズインフォマティクスの最前線について、創薬、ポリマー設計からプロセス開発まで様々な実例を挙げて解説をいただきました。加えて、モデルを更新しながら実験計画を最適化することで試行回数を最小化する適応的実験計画法についても分かりやすくご説明いただくなど、データ活用による研究・開発の効率化につながる有益な話を数多く伺えたご講演でした。
  • パネルディスカッションでは各講演者の先生方に加え、農芸化学会に所属する先生方をお呼びして、本領域にてDXを推進するためにはどうしたら良いか、という視点で議論しました。議論を通じて、(1) DXを推進する目的・意義の明確化、(2) 情報科学の素養を持たない初学者への丁寧な導入・指導、(3) トライ&エラーを繰り返す、の3点が重要であると分かりました。ロボットとデータサイエンスを活用した研究活動が当たり前になる、そのような長期ビジョンを持つことの重要性を理解出来た場になったかと思います。

農芸化学分野におけるDX推進と、それによる農芸化学のさらなる発展が期待されるセミナーになったかと思います。ご多忙中にも関わらずご講演を快くご承諾いただきました講師の先生方、ならびにご参加いただきました多くの皆様に改めて御礼申し上げます。今後とも、さんわか活動にご協力・ご参加いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

さんわか10期 伊出、小野、小泉、森田

概要

タイトル 「生命科学のDX:農化系ラボのデジタル展開を探る」
主催 日本農芸化学会 産学官若手交流会(さんわか)
ポスター

さんわか第37回セミナー ポスター(PDF)

開催趣旨

近年、様々な分野でDX(Digital transformation)への取り組みが推奨されており、その注目度もますます高まっております。生命科学の分野においても同様にDXを取り入れた研究が盛んに行われています。その一方で、自身の研究においては具体的にどのようなことができるのかよく分からないといった方もいらっしゃるのではないでしょうか?そこで、日本農芸化学会/第37回さんわかセミナーでは、「生命科学のDX:農化系ラボのデジタル展開を探る」と題しまして、研究のDXを先導し、第一線でご活躍されている先生方をお招きしてお話を伺う機会を企画しました。講演内容は
・ AI・計算科学の活用
・ 実験自動化・ロボティックバイオロジー
・ プロセス設計・実験計画のスマート化
といった多くの研究者にとっても興味深い内容のセミナーとなっているかと存じます。また、講演の後にパネルディスカッションを企画しており、生命科学実験に携わっている研究者も交えたディスカッションの場をご準備しておりますので、皆様方の研究のDXにお役立ていただければ幸いです。
参加費は無料で、日本農芸化学会会員ではない方の参加も歓迎しております。ご興味のある皆様方のご参加をお待ちしております。

日時 2022年1月21日(金)
13:00~16:00
開催方法 Zoomウェビナー配信
プログラム

13:00 開会の挨拶

13:05~13:45
「AI・計算科学が加速する生命科学」
大上 雅史 氏(東京工業大学 情報理工学院)

13:50~14:30
「実験自動化・ロボティックバイオロジーが加速する生命科学」
神田 元紀 氏(理化学研究所 生命機能科学研究センター)

14:40~15:20
「最新情報科学を活用したプロセス設計・実験計画のスマート化」
金子 弘昌 氏(明治大学 理工学部)

15:25~15:55
パネルディスカッション
大上 雅史 氏、神田 元紀 氏、金子 弘昌 氏
兒島 孝明 氏(名古屋大学 農学部生命農学研究科)
勝山 陽平 氏(東京大学大学院 農学生命科学研究科)

16:00 閉会の挨拶

※各講演、発表30分・質疑10分となります。質疑はZoomのQ&A機能を利用して聴講者から記入いただいた内容を運営スタッフが読み上げる形式を予定しております(変更可能性あり)。

参加費 無料
定員 200名
参加申込

お申込みは下記のリンクからお願いいたします。
参加申込フォーム

1/18までに申し込みされた方は、1/19にウェビナー参加URLを送付いたします。
1/19までに申し込みされた方は、1/20にウェビナー参加URLを送付いたします。(12/23更新)
それ以降に申し込みされた方は当日11:00までに送付する予定です。参加URLリンクが送られてこない場合は、下記問い合わせ先までご連絡ください。
※先着順で定員に達し次第、申込受付を締め切らせていただきますので、お早めにお申し込みください。
※お申込みいただいた個人情報は、参加確認および今後のさんわかセミナーご案内以外の目的には使用いたしません。
迷惑メールフォルダ等に振り分けられる場合がございますので、フォルダの確認をお願いいたします。
申込締切 2022年1月20日(木)22:00
問い合わせ先 日本農芸化学会 産学官若手交流会(さんわか)
E-mail (青字「E-mail」の部分をクリックしてください)