報告

2025年9月20日(土)、第44回さんわかセミナーを名古屋大学野依記念学術交流館を会場にZOOMウェビナーとのハイブリッド形式で開催しました。大学教員および企業研究者を中心に、学生や一般の方を含め総勢約160名(オンサイト90名およびオンライン70名)の方にご参加いただき、盛況のうちに終えることができました。4名の講師の先生方には、デジタル技術の活用による研究活動の効率化や、多様化する食のニーズの可視化・発掘、さらに環境・食糧問題の解決手法として注目を集めるバイオものづくりに関連する発酵技術や、微生物探索技術に至るまで、幅広いトピックに関しご講演いただきました。講演後の質疑応答および懇親会では、聴講者からの質問だけでなく、講演者間でも活発な議論が交わされ、多角的な視点から理解を深める貴重な機会となりました。

木村先生からは、日本の食産業が直面する変革の必要性と、「食」×「デジタル」をコンセプトとしたDigital Food Platform構想についてご講演いただきました。特に印象的だったのは、従来の自前主義から脱却し、大企業、スタートアップ、行政、アカデミアなど多様なステークホルダーを巻き込んだオープンイノベーションによるエコシステム構築の重要性でした。30年以上の実務経験を踏まえた実践的なアプローチで、困難な課題を機会と捉える広い視点の重要性を、熱意をもってお話いただき、参加者にとって非常に刺激的な内容となりました。 (報告、さんわか : 辻井)

      

西園先生からは、研究室内のプロトコルや実験結果の円滑な共有、計画的なグラント申請について、先生が取り組まれている事例を交え、様々な有用デジタルツールやルール浸透のためのコツ等についてご講演いただきました。適切なツールとルールによる情報の整理と透明化や、学生にも自身の予算と研究計画に責任を持ってもらうための取り組みなど、これから研究室を立ち上げたりプロジェクトチームを組成したりすることとなる立場の若手研究者だけでなく、組織運営に関わる多くの方々にとって非常に有益なものになったと思います。 (報告、さんわか : 加藤)

      

澤野先生からは、持続可能な食料生産を実現する「精密発酵」技術についてご講演いただきました。畜産業の環境負荷問題などを背景に、微生物の力を活用して乳タンパクや卵白タンパクなどの食品成分を効率的に創出する先進技術の広がりが印象的でした。消費者の受容性では「おいしさ」が鍵となり、特にチーズの食感再現などの技術開発が進行中とのことでした。精密発酵技術の現状と将来展望を包括的に解説いただき、参加者にとって食の未来を考える貴重な機会となりました。 (報告、さんわか : 榎)

      

細川先生からは、2025年注目の技術としてNature誌に取り上げられたシングルセルゲノム解析のご紹介から、独自技術の開発とその事業化や、遺伝子データベースの更なる活用に至るまで幅広くご講演いただきました。シングルセルゲノム解析に適した独自の反応環境をデザインすることで、特殊な実験設備を必要とせずに未培養微生物の網羅的なゲノム情報の取得を可能とされました。また、民間企業として世界最大規模となる独自の微生物遺伝子データベースを有しており、これらの活用によって迅速な酵素開発等に繋げることが可能とのことでした。バイオものづくりが注目されている昨今において、社会実装への更なる迅速化を可能とする革新的な技術であると感じました。 (報告、さんわか : 山中)

      

今回のさんわかセミナーは、ハイブリッド形式および支部例会との同日開催という2点において初の試みとなりました。アンケートでは講演内容およびハイブリッド開催に関して高い評価を頂きました。また、次回以降のセミナーで扱うテーマについても有意義なご意見・ご期待を賜りました。ご多忙の折、ご講演を引き受けてくださいました講演者の皆様、同日開催にご協力いただきました中部支部の皆様、そして本セミナーにご参加いただきました多くの皆様にあらためて御礼申し上げます。今後とも、さんわか活動にご協力・ご参加いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

概要

タイトル 「デジタル×AI×バイオが切り拓く農芸化学の最前線 〜ミクロからマクロまでの革新〜」
主催 日本農芸化学会 産学官若手交流会(さんわか)
ポスター

第44回さんわかセミナー ポスター(PDF)

開催趣旨

昨今、革新的な解析技術やAIが出現し、我々を取り巻く環境は研究のみならず産業界に至るまで急速に変化してきています。
それに伴い、これまでの常識には捉われない分野横断的な取り組みや、複雑かつ莫大なデータを適切に取り扱うための知識・管理術、そしてその活用法もますます重要になってきています。
そこで、本セミナーでは、細胞・核酸レベルのミクロな世界から、研究室のDX、技術の社会実装に至るまで、さまざまな分野でデジタル・AI・バイオを融合させたユニークな取り組みをされている講師による、対面とweb配信によるハイブリッド講演会を企画しました。

講演内容は
・産学官で総合的に取り組む食とデジタルのグローバル共創拠点化
・研究室のデジタル化・データ整理術
・次世代の食料生産技術「精密発酵」が直面する課題とトレンドに関する最新動向
・最先端技術であるシングルセル解析と、その事業展開
といった、学生から社会人まで幅広く学べる内容となっているかと存じます。

参加費は無料で、日本農芸化学会会員ではない学生や一般の方々の参加も歓迎しております。
なお、本セミナーは対面(名古屋)とweb配信によるハイブリッド開催を企画しており、現地では、講演会終了後に講師の先生方も交えた懇親会も予定しております。懇親会(現地のみ)への参加は有料となります。
皆様のご参加をお待ちしております。

オンライン参加の方:
当サイトよりお申し込みください。
現地参加の方:
同日開催される日本農芸化学会中部支部第202回例会HPより参加登録をお願いいたします。

また、本セミナーは(公財)野田産業科学研究所のサポートにより開催されています。

日時 2025年9月20日(土)14:55~17:00
開催方法 対面とweb配信によるハイブリッド開催
会場 名古屋大学 野依記念学術交流館(名古屋市千種区不老町)
アクセス 名古屋市営地下鉄名城線 名古屋大学駅徒歩5分
プログラム

14:55
開催挨拶

15:00~15:30
「Digital Food Platform構想:「食」x「デジタル」の産官学エコシステムとしてのグローバル共創拠点構築」
木村 英一郎 氏(東京科学大学)

15:30~16:00
「イチから始める研究室のデジタル化・データ整理術」
西園 啓文 氏(金沢医科大学)

16:00~16:30
「次世代の食料生産技術「精密発酵」の最新動向~今後の市場開発に向けた課題と展望」
澤野 健史 氏(三井物産戦略研究所)

16:30~17:00
「シングルセル解析技術の開発からバイオものづくりスタートアップへの展開」
細川 正人 氏(bitBiome株式会社/早稲田大学)

要旨集 要旨集(PDF)
※講演要旨集はパスワードを設定しております。オンライン参加登録者様には別途メールにてパスワードをご案内いたします。
参加費 無料、(懇親会のみ有料)
定員 200名
参加申込

オンライン参加申込は下記オンライン参加申し込みフォームからお願い致します。

現地参加、懇親会参加ご希望の方は、同日開催の中部支部例会HPよりお申し込みください。

申込締切

2025年9月16日(火)12:00

オンライン参加を申し込みされた方には、開催前日までにウェビナー参加URLを送付いたします。
先着順で定員に達し次第申し込み受付を締め切らせていただきますので、お早めにお申し込みください。
お申し込みいただいた個人情報は、参加確認および今後のさんわかセミナーご案内以外の目的には使用いたしません。

問い合わせ先 日本農芸化学会 産学官若手交流会(さんわか)
sanwaka.jsbba●gmail.com
(「●」を「@」に変換して送信してください)