ダイバーシティ推進委員会主催 2022年度シンポジウム
「考えよう、働きやすい環境づくり!〜あなたと描くダイバーシティ社会〜」開催報告

ダイバーシティ推進委員会主催2022年度シンポジウムが2022年10月31日(月)13:00 〜16:30 、zoomにてオンライン開催された。

日本の男女共同参画政策の推進に向けて、多くの大学や研究機関、企業、官公庁など様々な機関において、ジェンダー・ダイバーシティへの取り組みがなされ、大学院に進学する女子学生の増加、上位職の女性の増加、意思決定層に占める女性の割合の向上が進められている。しかしながら、さらなるダイバーシティ推進には、女性の働く環境への配慮だけでなく、男女や職位、国籍を問わず、働く環境のダイバーシティを整備することが必要であると思われる。そこで、本シンポジウムでは、様々な立場にある講師の方に「働きやすい環境づくり」に関わるトピックスについて、ご自身の体験や情報を共有いただき、さらに参加者との意見交換の場を設けることで、現代社会で求められる働く環境のあり方について議論することを目的に開催した。

「働きやすい環境づくり」を主題として、シンポジウムでどのようなトピックスを設定すると良いか、ダイバーシティ推進委員15名で議論した結果、「多様な働き方を支援する側の取り組み」、「支援を必要とする側が求める取り組み」、「ワークライフバランスの考え方や経験談」、「日本と海外での働く環境づくりへの考え方の違い」、「日本で働く外国人が感じる日本の働き方の良い点や問題点」など、多様なトピックスを出し合うことができた。また委員のご尽力により、大学や研究機関、企業などの所属を問わず、管理職の方、子育て世代の方、そして海外勤務をされている方など、様々な立場の10名の方に講師をお引き受けいただくことができた。参加者については、事前に100名近くの参加登録をいただき、アカデミア所属の方(教員等)が6割、学生が3割、企業・その他に所属される方が1割と、平日午後の開催だったためか、大学・研究機関からの参加者が多かった。しかし年齢区分で参加者層を見てみると、20代と40代がそれぞれ3割、30代が2割、50代以上が2割と非常に幅広い年代の方にご参加いただき、加えて、全体の男女比はほぼ同等であったことも合わせると、本シンポジウムが、講師・参加者ともに多様性に富んだ構成であることが感じられた。また、「働きやすい環境づくりを考える」というタイトルから、これから社会に羽ばたく学生にとっては、将来のライフイベントやライフ・ワークバランスについて、いろんな立場の方から経験談を聞きたいとの希望があったのだろうと思われる。また、30〜50代の参加者は、今まさにワーク・ライフバランスを日々感じながら働く世代といえ、「働く環境のあり方」について様々な意見収集ができるだろうと期待された。

シンポジウムでは最初に、講師の方に5分間のプレゼンをお願いし、簡単な自己紹介とそれぞれのトピックスについてお話しいただいた。タイトル一覧からも感じられる通り、10名の講師の方それぞれの立場や経験を元にした興味深いトピックスばかりで、どのお話もすべてじっくりと伺いたい!!と思う内容ばかりだった。その後、講師ごとに設定したブレイクアウトルームに移動し、約1時間半にわたり、講師を中心に参加者とのグループディスカッションを行った。今回の新しい試みとして、各ブレイクアウトルームには、学会員やダイバーシティ推進委員が担当するモデレーターを置き、講師・参加者の意見交換の促進や、ディスカッションの内容をまとめる役割を担っていただいた。また参加者の方には、できるだけカメラオンでご参加いただくようにお願いして、参加者の自己紹介も交えながら、対面開催に近い環境でグループディスカッションが行われた。私はモデレーターではなく、一般参加者の一人としてグループディスカッションに参加したが、参加したどのグループも和やかな雰囲気が感じられ、講師の方の貴重な体験談や問題提起、ご提案について、学生参加者も気軽に講師の方と意見交換がされていた。

グループディスカッションの後には総合討論として、最初に、各ブレイクアウトルームで出された意見について簡単にご報告いただいた。働く環境やライフイベント、今後のキャリアデザインなど、参加者からの様々な質問に対する議論や、不安、悩みに対する講師や他の参加者からのアドバイスなど、いずれのブレイクアウトルームでも活発に意見交換された様子が伺えた。簡単な報告からだけでも、「やはりすべてのお話をじっくりお聞きしたかった!!」と思うほど、非常に濃厚で、実りある意見交換だったことを感じた。そこで、多くの方に今回の意見交換の内容を知っていただきたい!との思いから、担当のモデレータの先生方に、各ブレイクアウトルームの報告書をご執筆いただいた。こちら(ブレイクアウトルーム報告)からぜひご一読いただきたい。

総合討論の最後に、講師による意見交換の場を設けたいと考えていたが、予定時間を超えてしまい、十分な意見交換は叶わないままシンポジウムを終えることとなった。参加者からの参加後アンケートでも、「グループディスカッションを受けて、さらに講師の方のパネルディスカッションがあると良いと思った」とのご意見や、講師の方からも「他の講師の方に質問してみたかった」などの声もあり、本シンポジウムをまとめる重要な時間をセッティングできなかったことに後悔が残った。またアンケートには「興味深い内容ばかりで、いくつものルームに参加できるようにして欲しかった」とのご意見が多く寄せられ、次回の開催にむけた重要な改善案をいただくことができた。

本シンポジウムを終えて、参加後アンケートには、「仕事とライフのバランスや統合に関して深く考えさせられる良い機会だった」、「今後は積極的にダイバーシティ推進に参加しようと思った」、「分野横断的なワークライフバランス関連の情報共有ができるプラットホームができると良いと思った」、「このような取り組みが増えることで社会全体の意識もより変わると思う」、「他大学の先生の意見を気軽に聞ける貴重な機会だった」、「いただいた意見や情報を参考に、これからの生活をより良い環境づくりに活かしたい」など、数々の意見が寄せられた。このような意見から、本シンポジウムが、多様な立場の方々にとって有効な情報共有の場となり、ダイバーシティ推進への意識向上の一助となれたように感じている。しかしながら、多くの方から意見収集ができ、共有はできたものの、その貴重なディスカッションをどのように活かすことができるか、どうすれば「誰もが働きやすい環境」を作り出すことができるのか、ダイバーシティ推進を向上する結論には至らなかったことは、今後の改善点と言える。ある書籍によると、近年、Diversity & Inclusion(D & I)という考え方がダイバーシティ推進に重要であると言われているそうだ。ダイバーシティ推進とは、「人材の多様性を認めること」であるが、D & Iの考え方では、「人材の多様性を認め、受け入れて活かすこと」を意味するのだそうだ。今回のディスカッションでDは達成できたように感じているが、これを基に、Iまで昇華することが、本当の意味でのダイバーシティ推進であることを改めて実感した。学会は、産学官、男女、年齢、職位を問わず、一同に会することができるダイバーシティに富んだ組織である。この学会が持つ利点を活かし、このようなシンポジウムの開催や情報発信を継続的に実施することが、D & I推進に向けた学会こそができる社会貢献であると感じた。

文責 ダイバーシティ推進委員
福井県立大学 丸山千登勢